鉄鋼製品の規格適合条件を変更、輸入制限を強化

(ベトナム)

ホーチミン発

2016年04月28日

 国内産と輸入鉄鋼製品の品質管理に関する商工省・科学技術省共同通達44号(44/2013/TTLT-BCT-BKHCN、2013年12月31日公布、2014年6月1日施行)が、共同通達58号(58/2015/TTLT-BCT-BKHCN、2015年12月31日公布、2016年3月21日施行)に置き換わった。品質適合検査の前の鉄鋼輸入需要と鉄鋼輸入の申告、確認プロセスの追加、一部製品の非破壊検査の実施などが新たに付け加わった。規格適合条件が厳格化され、輸入制限が一段と強化されたといえよう。

<日系企業への影響は限定的か>

 共同通達58号では、適合基準対象品目の見直し、流通前の適合基準公表に含まれる指標が厳格化されたことと、鉄鋼輸入需要と鉄鋼輸入申告が義務化されたことで、輸入手続きが煩雑になり、当面、日系企業も含め現場で混乱が生じる可能性は否めない。しかし、科学技術省に確認したところ、輸入鉄鋼製品の品質適合検査自体は11条に軽減措置条項があり、旧通達44号で活用された日本検査キューエイ(JICQA)、日本品質保証機構(JQA)、日本適合性認定協会(JAB)などによる海外認証や各メーカーのミルシートによる軽減方式が、通達58号でも新たに申請すれば適用可能とのことであり、高品質製品を供給する日系企業にとって影響はそれほど大きくはなさそうだ。一方、低品質製品の輸入は適合基準公表に含まれる指標が厳格化されたことにより、ある程度影響を受けるとみられる。

 

<需要の申告などを追加>

 共同通達58号による主な変更点は次のとおり。

 

1)通達44号ではHSコード4桁で記載されていた品質管理対象品目が、通達58号では8桁に変更。記載箇所は、通達58号付録IIIIIに記載された国内産と輸入鉄鋼製品(11a)。

 

2)通達58号で、品質管理非対象品目(HSコード8桁)が追加。記載箇所は、通達58号付録Iに記載された国内産と輸入鉄鋼製品(11b)。

 

3)適用基準公表に含まれる主な指標が追加

○サイズ、外観、メカニカル・物理指標(溶融限度、張力限界など)(34a)。

○化学指標。炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)の5元素の分有率。ステンレスの場合は5元素に加え、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)も追加(34b)。

○下記の製品は非破壊検査が適用されること。

・厚みが10ミリ以上の製品。直径が50ミリ以上の棒鉄。

・角鋼、形鋼、波鋼板。

・箱形であり、幅が150ミリ以上、厚みが4ミリ以上、コイルではなく、模様がない製品(35項)。

 

4)鉄鋼製品の輸入需要の地方商工局への申告と確認書の発行(追加項目)

 組織・個人が製造・機械加工などの目的で輸入する鉄鋼製品の需要の申告と、国家規格QCVNに適合した鉄鋼をコンクリートの鉄筋資材として使用しない旨の約束文書を地方商工局に提出し、確認書の発行を依頼し受領しなければならない(6条)。

 

 申告書には、設備説明書(工場・倉庫の面積、製造ライン)、製造能力、製品の種類、製造の材料としての鉄鋼需要(トン、年間)(61c)。

 

5)鉄鋼製品輸入に関する商工省(重工業局)への申告と確認書の発行(追加項目)

 上記4項と同じ趣旨の申告書(通達58号付録IVの申請様式)をハノイの商工省(重工業局)に提出し、確認書発行を依頼し受領しなければならない(7条)。

 

6)輸入鉄鋼製品の品質検査の軽減方式の適用に関する規定(追加項目)

 輸入鉄鋼ロットが海外認証されていて、通達58号の規定を満たしている場合は軽減措置が適用される(11条)

 

(栗原善孝)

(ベトナム)

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