非居住者の在庫取り扱いが可能に－インドネシアの通関事情（3）－

2015年11月に導入された新たな保税制度

PLBとは、2015年11月の政令第85号で制度化された新たな保税蔵置場だ。インドネシア政府がASEAN地域における物流ハブ化と企業の流通コスト削減を狙って導入された。PLBの主な特徴は以下のとおり（2016年8月19日記事参照）。

（1）輸入品については、PLBへの搬入から搬出時まで輸入に関する諸税を支払わずに蔵置できる。

（2）PLBの施設管理を行う事業者が、PLBの全部あるいは一部をインドネシア国内の輸出入者やインドネシア非居住の製品サプライヤーなど第三者に貸与し、また、これらの事業者の既存の倉庫もPLBとして運営できる。

（3）PLB内で梱包（こんぽう）・品質管理・送り先ごとの仕分けなどの簡易作業ができる。

（4）3年の蔵置期間がある。

PLBは、新規あるいは既存倉庫を有する企業からの申請を基に、（1）監視カメラなどの十分な設備があり、かつ（2）明確なビジネスプランを有し、かつ（3）認定通関業者（AEO）有資格企業、上場企業、国営企業、あるいは（4）面積が1万平方メートル以上の規模であること、を条件に税関総局が審査・認定する。既にPLB認定を受けた企業は、さらに他の倉庫（この場合1万平方メートル未満でも可能）について追加的に申請することができる。税関総局によると、2017年3月時点で26社（手続き中を含む）がPLB事業者として認定されている。なお、申請書類の提出先は管轄地の税関窓口となる。

非居住者在庫の利用に注目が集まる

ジェトロと税関総局が3月2日に行った説明会には約120人の日系企業関係者が参加した。同説明会では、PLBの活用方法のうち、非居住者による利用に注目が集まった。従来、保税倉庫は居住者名義でしか貨物を保管することができなかったため、インドネシアに拠点のないサプライヤーは顧客からの発注の都度、国外の倉庫などから輸入するなど長いリードタイムが必要だった。しかし、PLBではインドネシア非居住者名義であっても、国内に貨物を保税で保管できるようになった。これにより、例えば国内に拠点を有しない日系の自動車部品サプライヤーが、最長3年間、PLBに在庫をストックし、顧客（製造業に限る）のオーダーに合わせて適時必要な量だけPLBから商品のデリバリーができるようになった。従って、サプライヤーはPLBを利用することで、発注のたびに小口輸送するのではなく、一括で一定数量を輸送でき、顧客への配送時間も大幅な短縮が可能になった。なお、日インドネシア経済連携協定（JIEPA）などの軽減税率を適用するための原産地証明書などは、PLB搬入時の書類を、PLBからの搬出機会ごとに分割して使うことができる。

また、PLBのエリア内で、簡易作業を行うことも可能だ（図参照）。税関総局によると、PLBに搬入した複数の製品を顧客のオーダーに合わせて梱包・再梱包、仕分け、箱詰め、ラベル張り、品質管理などの作業を行うことができる。PLBには最長3年間蔵置できるため、バルクで搬入した複数の製品を、顧客のオーダーに合わせて組み合わせて、必要な量だけ搬出することができる。さらに、説明会（3月2日）での税関総局の説明によると、インドネシアでは国内取引に現地通貨ルピアを使用する義務があるものの、輸入取引では免除されていることから、PLBからの搬出時に外貨での取引が可能となる。詳細は確認中だが、これが実際に運用されれば、PLB利用者（例えば商社など一般輸入者＝API－U）が輸入者（製造輸入者＝API－P）に販売する際の為替リスクを回避できる。

このように従来の保税倉庫に比べて、柔軟な在庫取り扱いが可能なPLBだが、輸入取引の国内の搬出先は製造業に限られている点に注意が必要だ。PLBでは輸入で消費財や完成品を取り扱うことはできず、部品や半製品など国内の製造フローで用いる品物を製造業者に対して納めることが原則となっている。ただし、PLBの運用は始まったばかりで、個々のビジネスモデルの実現に関しては、PLB事業者と相談しつつ税関に弾力的な運用を求めていくことも可能だろう。

（山城武伸）