中銀が外貨配分の新指令、外資や製造業などに配慮も

(エチオピア)

アディスアベバ発

2017年05月08日

 中央銀行が3月に外貨割り当てに係る新たな指令を発表した。慢性的な外貨不足の中、顧客重視の姿勢から割り当ての裁量を拡大したい市中銀行に対し、各行の内部監査体制の強化を求め、外貨配分の透明性を高める方針を明確にした。新指令では、農業、製造業、建設業、基礎保健・教育分野を重視する姿勢も打ち出している。

市中銀行に厳重な内部監査を要求

新指令(Directive:FXD/46/2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))は3月20日付で、即日発効した。外国為替については2016年2月の前回指令(FXD/45/2016)を補足するもので、今回の指令で中央銀行は市中銀行に対して、各行が独自に定めた外国為替管理についての内部監査の厳重な執行を求めており、架空の申請により外貨配分の不適切な取り扱いがなされていないか、必要に応じて監査チームで検証するよう求めている。市中銀行は毎週、中央銀行に外貨払出額を報告する必要があり、その際には企業からの外貨申請だけでなく、外国からの見積書(請求書)の写しも必要となる。

市中銀行は長年の顧客や大口顧客に対しては外貨の割り当てに裁量幅を残したいという姿勢だが、中央銀行は、外貨の配分に裁量の余地があることは、汚職や不当利益の温床になるとの立場だ。新指令は外貨配分をめぐる公平性について、中央銀行の考えをあらためて明確にしたものといえそうだ。

国造りの関連分野には外貨を優先割り当て

外貨規制の中でも企業活動への配慮はみられる。外国法人や駐在員事務所が保有する銀行口座からの外貨の国際送金は外貨割り当てとは無関係に認められている。コンサルタント業務への支払い、手数料、据え付け料、ロイヤルティーなどの支払い、外国人従業員の給与の海外送金も外貨割り当てとは関係なく可能だ。

外貨割り当ての優先分野には、国造り(農業、建設業、製造業、基礎保健・教育)に関連する分野が並んでいる(表参照)。このうち、製造業では製造に必要な機械・器具、代替部品、原材料、付属品・装飾品が明示された。製造業の場合、銀行が輸入信用状(L/C)開設のために通常要求する額面30%以上の預け入れについても、新指令では「例外とし得る」とされた。また、外貨割り当ての対象ではあるが、利益、配当金の送金も含まれる。軽工業を中心に製造業誘致を図り、外貨獲得・節約を図りたい政策を反映した格好だ。

新指令における外貨割り当て優先分野は次の通り。

  1. 燃料・自動車燃料、潤滑油、液化ガス
  2. 肥料
  3. 農業投入物・農機(種子、殺虫剤、灌漑ポンプ、飼料、機械・器具、トラクター・刈り入れ機とその部品)
  4. 医薬品(実験具、試薬、医療機器・器具を含む)
  5. 製造業が必要とする機械・器具、代替部品、原材料、付属品・装飾品
  6. 乳幼児の栄養補助食品
  7. 5万ドルを超えない建設会社の自社建設機械の代替部品
  8. 教育資材(学習書、ボールペン、鉛筆、印刷紙)
  9. 化学品
  10. 利益、配当金の送金
  11. 外国航空会社の超過手荷物料金収入
  12. 外国直接投資による株式配当、清算に伴う送金

(出所)エチオピア中央銀行指令(Directive:FXD/46/2017)を基に作成

販路開拓は割り当て優先分野を踏まえて

海外からエチオピア市場の開拓を図る上で、外貨割り当てが制約となっている。当地ではこれまでL/C開設に2~6ヵ月かかるとされてきたが、最近では9ヵ月かかるとの報道も多くなっており、新規開拓を目指すには取り組みにくい市場といえよう。エチオピアへの輸出を目指す場合は、自社の商材が外貨割り当ての優先分野に含まれていれば制約が軽減されるだろう。

希少な外貨ゆえに、当地の売れ筋を見極めることも市場開拓には重要だ。店頭では十分に機能を生かせない商品や過大・過小なサイズの商品が在庫として残る一方、適正な機能やサイズの商品は在庫を切らしており、入荷の見通しがつかない状況もよくある。上述のとおり、銀行がL/C開設を承認するには額面の30%以上の預け入れが必要となるため、売れ筋でない商品発注を受けることは、結果的に在庫を抱えて資金繰りが悪化する代理店などが次回の発注を遠ざける可能性もある。

(関隆夫)

(エチオピア)

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