ロシア全土でブロードバンド接続を実現へ-デジタル経済化で政府が2024年までの行動計画を策定-

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年01月26日

ロシア政府は1月9日、デジタル経済化推進に向けて策定された行動計画(ロードマップ)を承認した。4つの分野(法制度、研究範囲と対象製品の特定、情報インフラ、情報セキュリティー)に分かれ、2024年までに段階的に実施する。情報インフラ分野では、インターネットへのブロードバンド接続に向けたインフラ整備や、次世代の通信衛星システム開発に重点的に予算が割り当てられている。

ブロードバンド整備に政府予算を重点的に配分

今回発表されたのは、「プログラム『ロシア連邦のデジタル経済』(2017年7月28日付政府指示第1632-r号で承認済み)」の行動計画(注1)。その4分野は(1)法基盤整備、(2)研究範囲と対象製品の特定(関連分野での組織育成・人材開発を含む)、(3)情報インフラの整備、(4)情報セキュリティーの構築にわたるもので、対象期間は2016年から2024年まで。各行動計画には主管省庁と責任者、参加機関・機関、プログラムの目的、2016~2020年の予算額、実施内容などが明記されている。

行動計画のうち、今回、最も多い予算が計上されたのは情報インフラ分野だ。2020年までの予算額は4,346億1,067ルーブル(約8,692億円、1ルーブル=約2円)で、うち985億893万ルーブルが政府予算(2017年分を除く)、3,361億114万ルーブルが政府予算外(民間資金など)の資金となっている。そのほか、法基盤整備は合計2億6,900万ルーブル、研究範囲と対象製品の特定は481億3,150万ルーブル、情報セキュリティーは340億4,300万ルーブルとなっている。

情報インフラ分野での行動計画は、(1)通信網の整備、(2)保管(ストレージ)と処理(プロセッシング)のための国内インフラ整備、(3)デジタルプラットフォームの整備、の3つに分かれる。通信網の整備については、2018年中に公的医療機関のブロードバンド接続を100%とし、2020年には政府機関、自治体、重要輸送施設で100%導入する。2024年には全ての教育施設と97%の家庭でのブロードバンド接続を確保する。個人、ビジネス、公的機関にサービスを提供するデータセンターを、8つあるロシア連邦管区のうち、2020年までに4管区(中央、北西、ウラル、シベリア)、2024年までには全管区で設置する。政府機関・自治体所有の情報システムを2018年から徐々に政府統一のクラウドプラットフォームに移行する予定。政府の認定を受けたデータセンターが政府機関へのサービスを提供し、長期的にはロシア企業が世界でデータ保管・処理を提供するシェアを拡大することを目標とする。

政府予算外で現状は次世代通信衛星システムが目玉

情報インフラ分野に割り当てられた政府予算985億ルーブルのうち、もっとも多く(4年間で388億ルーブル)が投じられるのは、全国でのブロードバンド網の整備だ。全国に1万399カ所ある人口250人から500人までの村落への普及を目指す。これに、ロシア国民、政府、企業へのデータ保管・加工サービスの提供(220億ルーブル)、公的医療機関のブロードバンド接続実現(160億ルーブル)などが続く。インターネットへのブロードバンド接続環境の整備について、ロシアの通信会社大手ロステレコムのミハイル・オセエフスキー社長は1月15日、プーチン大統領との面談で、a.「ロシア連邦のデジタル経済」プログラムの実現に同社として意欲的に取り組むこと、b.今後5年間に通信インフラ整備を中心に自社で3,000億ルーブルを投資する予定、c.医療機関での遠隔診断の実現、d.ロシア極東でのインフラ整備が2018年末には終了すること、などを報告している。

一方、情報インフラ分野に割り当てられた政府予算外の3,361億114万ルーブルについては、その大部分の2,990億ルーブルがロスコスモス(ロシア連邦宇宙庁)の主導する「世界多機能情報通信衛星システム(Global multifunctional InfoComm satellite system:GMISS、注2)」の開発が占めている。ただし、政策責任者の1人であるニコライ・ニキフォロフ通信マスコミ相は2017年12月18日、関連の閣僚会議で「行動計画は年に複数回見直す」としており、今後、民間投資額や計画内容の修正などを適宜行う方針だ。

またロシア政府は、デジタル経済化をCIS地域で積極的に主導しようとしている。プーチン大統領は1月18日、2018年1月1日からロシアがユーラシア経済連合(EEU)の議長国になったことで、EEU加盟国の首脳に対しメッセージを送付した。その中で、「共通のデジタル化に向けたテーマの実現加速は不可欠」と、EEUとしてもデジタル経済の推進に積極的に取り組むよう呼び掛けている。

(注1)プログラム「ロシア連邦のデジタル経済」の詳細については、ジェトロの「地域分析レポート」(2018年1月11日付)を参照。

(注2)多数の相互連動の低軌道衛星により、ロシア全土をカバーするデジタル通信網。ロシアは、衛星経由での遠隔地向け音声・データ通信網構築を模索している。

(高橋淳)

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