広州市で「日中中小企業シンポジウム」を開催-両国企業のイノベーションに関する取り組みを紹介-

(中国)

広州発

2018年03月06日

ジェトロは1月31日、広東省政府や現地の日本商工会と連携し、同省広州市で「日中(広東)中小企業シンポジウム」を開催した。同シンポジウムでは、「イノベーション」をテーマに日本と中国の中小企業の取り組みを紹介し、ビジネス連携の可能性を探るなど、日中の中小企業間の交流を深めた。日中合計で320人(日系企業175人、中国側145人)が参加した。

イノベーションに強い広東省深セン市

日中(広東)中小企業シンポジウムは、2016年に続く3回目の開催。中国政府部門による中小企業育成の取り組みや、日中企業のイノベーションに向けた取り組みなどを紹介し、日中の中小企業間でのビジネス連携の可能性を探り、交流を深めることが目的だ。

中国側主催者の代表である広東省中小企業局副局長兼中国国際中小企業博覧会事務局長の何佐賢氏は、省政府が中小企業の発展を重視していることや、中国国際中小企業博覧会を通じて、中国の中小企業と日本を含む各国の中小企業との交流を促進していることを紹介した。

ジェトロ広州事務所の天野真也所長は、深セン市について、(1)深センには、テンセントやドローン最大手のDJI、華為技術(ファーウェイ)など世界を舞台に活躍する民営企業が多く集積しており、新興企業によるイノベーション関連の取り組みが活発なこと、(2)深セン市の特許協力条約(PCT)国際特許出願(注1)件数は中国全体の約半数に上り、さらにそのほぼ半分を同市の南山区が占めていること、(3)起業意欲が旺盛なこと(年間35万件、1日当たり約1,000件)、(4)深セン市企業のマーケティング力が高いこと、の4点に注目すべきだと述べた。

深セン清華大学研究院の劉仁辰副院長は「深セン市は香港に隣接した自由で開放的な文化を持つ都市として、広東省珠江デルタの電子・電機産業の集積の強みを生かしつつ、近年の人件費などのコスト上昇、環境規制の強化による競争力低下を乗り越えるためのビジネス発展モデルを模索している。2017年の深セン市の域内総生産(GRP)は香港、広州市を上回り、GRP成長率は8.8%と全国平均より高水準となった」と述べた。そして、「独自技術の開発と実用化を目指すイノベーションは、持続可能な経済発展を実現するための最も有効なツールだ」とし、「イノベーションに基づく経済発展」のための取り組みを紹介した。海外との連携については、「深セン市でイノベーションに取り組む日本企業に対するビジネス展開支援プログラムを通じて、日中の企業が技術提携、市場開拓、資金調達などの分野で連携の可能性を見いだしている」とコメントした。

写真 シンポジウム会場の様子(ジェトロ撮影)

常識を覆す新たな取り組みに注目

企業経営者のパートでは、GLMの小間裕康代表取締役社長が自社の取り組みについて講演した。同社は2010年に設立し、日本で電気自動車(EV)の量産に成功したベンチャー企業で、開発拠点を持ちながらも自社工場を有さない経営を行っている。車台や駆動部分とバッテリー、外観部分を完全に分離した「EVのプラットフォーム化」により、従来型の自動車メーカーの系列にとらわれず、先端技術を持つ企業との共同開発を実現した。車づくりの経験のない会社でも、同社が開発した「EVプラットフォーム」を利用することによって、自動車業界への新規参入が可能となる。

小間社長は「先端技術を持つ大手企業との共同開発を通じて、開発費の削減を実現した。加えて、知的財産権保護でも、大手企業と連携して対策が取れることは強み」と述べた。また、多様化する消費者ニーズに対応し、競合企業と差別化するためにラインアップをさらに充実させることが必要との考えを示し、同社の「EVプラットフォーム」の活用を通じた中国企業との連携の可能性を語った。

写真 GLMの小間代表取締役社長(ジェトロ撮影)

空中移動に有人ドローンを開発

中国企業の講演では、ドローンメーカーである広州億航智能技術(EHANG)の張宏副総裁が登壇した。同社は2014年に広州市で設立され、現在、北京市、上海市、米国、ドイツに拠点を構えるなど、積極的なグローバル展開を図っている。2016年に発表した世界初の人を運べる自律飛行(注2)ドローン「億航(Ehang)184」で、世界の注目を集めている。

人を運べる自律飛行ドローンの開発には、同社が強みとする空域内のドローンを管理する制御システムが使用されている。同システムは、2017年12月に広州市で開催された「フォーチュン・グローバル・フォーラム」(注3)の開幕式で、1,180台の編隊飛行によるパフォーマンスを披露し、世界記録を塗り替えたことで高い評価を得た。同社は今後、世界各地でEhang184のテスト飛行を行う予定で、安全性の向上に向けて取り組んでいる。

写真 EHANGの張副総裁(ジェトロ撮影)

(注1)特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願で、1つの出願願書を条約に従って提出することにより、PCT加盟国全てに同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度。

(注2)事前に目的地や経路を設定すると、自動的に飛行する技術のこと。

(注3)1930年創刊の「フォーチュン」誌主催で1995年から開催されており、グローバル企業の代表、有力政治家、政府関係者やエコノミストを招き、世界経済が直面する問題について議論するフォーラム。毎年、経済的に魅力的な都市を開催地に選定している。

(房納、張琳荷)

(中国)

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