インドでの日本食普及に向けて-内閣総理大臣補佐官がピーアール-

(インド)

ニューデリー発

2018年03月30日

巨大市場インドでは、日本食や日本の食品関連技術などが広まる余地は十分にある。3月中旬に、日本の農水産品の海外輸出振興を担当する内閣総理大臣補佐官が訪印し、各種イベントで日本食や日本の関連技術の魅力をインド側に訴えた。

官民をあげて日本食を売り込み

日本政府が日本食や食文化の海外展開を推進する中、巨大な人口を抱え、着実な経済成長が続くインドでの日本食の広がりには業界関係者からも期待が高まっている。3月中旬に宮腰光寛(みやこしみつひろ)内閣総理大臣補佐官(ふるさとづくりの推進及び農林水産物の輸出振興担当)がニューデリーを訪問し、インドで日本食を広めるための各種イベントで日本食の魅力や食の分野における今後のインドとの協力 などを訴えた。

宮腰内閣総理大臣補佐官は、3月13~17日にニューデリーで開催されたインド最大の国際食品・ホスピタリティ分野展示会「AAHAR(ヒンディー語で食品の意味)」の開会式で登壇し、「農林水産食品分野での日印政府間の協力を進めていきたい」と訴えた。開会式にはスレシュ・プラブー商工大臣も参加し、インドの野菜などの食糧生産国としての強みについて言及。「現在は食習慣の変革が起こっており、今後は食品加工産業の重要が一層高まる」とコメント。食のバリューチェーン、サプライチェーンの構築への意欲を見せ、その中で特に航空輸送の強化について触れた。さらに、日本に対し「水産加工業での協力をお願いしたい」と付け加えた。

同展示会はインド貿易促進機関(ITPO)が主催し、出展企業は900社を超え、海外からは米国、イタリア、中国、韓国など18か国が参加した。ジェトロはジャパン・パビリオンを組織し、コメや、ワサビ、米菓、梅酒など、日系食品関連企業7社を展開した。

日印政府間の協力も進む

3月13日にはジェトロとインド工業連盟(CII)が共催で、日本食普及のためのセミナーをニューデリーで開催。インドの食品輸入業者、レストラン関係者などを中心に約150名が参加した。

挨拶に立った宮腰総理補佐官は、ユネスコの無形文化遺産に認定されている日本食の魅力をアピールし、今回の自らの訪印を機に、インドへの水産物輸出に必要となる衛生証明書の様式が合意に至ったことについて触れ、「日本から寿司の材料の輸出が可能になる。おいしい日本の水産物をぜひインドで食べてほしい」と呼びかけた。また、「日印でコールドチェーン構築に関する協力も始まっている。日本食の輸出、日本企業の後押しとなることを期待したい」と述べた。

続けて、主催者を代表し挨拶したジェトロ・ニューデリー事務所の仲條一哉所長は、2011年3月の東日本大震災の原発事故を受けて科学的根拠無しに日本産食品の輸入禁止措置をとった国もあった中、インドがそうした措置をとらなかったことに改めて感謝を伝えつつ、「日本産食品は機能的で、健康志向。インドにも幅広く展開されるべき」 と訴えた。

インド食品加工省のパラグ・グプタ局長は、「技術力の高い日本に対しては食品加工のほか、物流、保管など様々な分野での協力に期待する」と応じた上で、「日本食はより手ごろな値段で入手できるようになり、多くの人に知ってもらうことが重要」と結んだ。

続いて、日本の鶏卵業界最大手イセ食品がインドの食品加工省との間で、テランガナ州における鶏卵生産・卸売事業への参画についての覚書を締結した。同社は約22億ルピー(約35億2,000万円、1ルピー=約1.6円)を投資する計画だ。また食品の輸入販売などの規制当局であるインド食品安全基準局(FSSAI)は、日本政府との間で、食の安全分野での協力を推進についての覚書を締結した。

インドの嗜好に配慮、新たな価値を提供

本セミナーでは、インド進出日本企業の代表として、デリー首都圏で寿司などのデリバリーサービス「スシ・ジャンクション」を展開するトマトの手嶋友長社長が登壇し、「寿司はインドでは前菜と認識されやすいため、メインディッシュなどのメニューも開発した。インド人の食習慣や好みに合わせる工夫が必要」とコメントした。さらに、ヤクルトダノン・インディアの嶌田実社長は、健康志向が高まるインドの消費者のニーズに合わせ、低糖低カロリーの「ヤクルトライト」を2月から販売開始したことを紹介。同社製品の健康促進機能について説明すると共に、女性販売員「ヤクルトレディ」の展開を通じ、インドの女性の社会進出への貢献についても語った。

最後に、地場低温物流のスノーマンと合弁事業を有するインド三菱商事の塩﨑英輔社長は、「食品の保管、物流状況が悪いと栄養価が下がるだけでなく、廃棄にも繋がる」としたうえで、食品の鮮度の重要性を強調。「低温物流への価値意識の向上が、最終的には農民の所得向上にも繋がる」と説明した。

(古屋礼子、梅木壮一)

(インド)

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