メディアやエコノミストは合意に一定の評価-「米朝首脳会談」に対する見方-

(スウェーデン、米国、北朝鮮)

ロンドン発

2018年06月14日

スウェーデンは、北朝鮮に大使館を置く数少ない国の1つであり、南北朝鮮国境に設けられた「中立国監督委員会」に1953年以来、スイスとともに停戦監視部隊を派遣している。このため、北朝鮮の非核化については、積極的に関与する姿勢を示しており、2018年3月6日にステファン・ロベーン首相がトランプ大統領と米国で会談した際、「米国から助けを求められれば協力する」と発言した。今回の米朝首脳会談(6月12日)でも、開催候補国の1つとみられていた。

しかし、米朝首脳会談後の当地報道をみると、同日のトップニュースとして扱われたものの、国民の関心はさほど高くない。政府や経済団体などによる公式なコメントや一般市民へのインタビューなどはなく、「合意に達したことは評価されるが、合意内容にはあまり中身がない」との専門家による解説もみられた。

新聞各紙は6月12日付で、マルゴット・バルストルム外相の発言を紹介、今回の会談を「外交の勝利」と評価し、「侮辱から対話に、言葉から行動に、役者が2人から数人に変わる」と述べ、将来の外交交渉の進展への期待をにじませた。政府傘下の貿易投資促進機関ビジネス・スウェーデンのチーフエコノミストであるレーナ・セルグレン氏は、会談によるマクロ経済への影響を予測するには時期尚早としつつも、アジアの緊張が緩和に向かうことで、スウェーデンとアジア間の貿易に好影響をもたらし、アジアへ向けた投資拡大のきっかけとなる可能性がある、との見解を示した(「SVD」紙6月12日)。

しかし、2001年にEU議長国の代表として北朝鮮を公式訪問したヨーラン・ペーション元首相は、今回の会談が人権問題について触れなかったことを指摘、「最終的には人権が重要だ。北朝鮮の国民が選ぶことだが、彼ら(北朝鮮政府を指す)は妥協しないだろう」とコメントし、楽観的な見方を牽制している(「SVD」紙6月12日、「アフトンブラーデット」紙6月12日)。

(三瓶恵子、篠崎美佐、岩井晴美)

(スウェーデン、米国、北朝鮮)

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