鉄鋼・アルミの関税拡大、業界の反応は二分

(米国)

ニューヨーク発

2018年06月01日

トランプ大統領がカナダ、メキシコ、EUに対して、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼とアルミニウムへの関税賦課を決定(2018年6月1日記事参照)したことについて、業界の反応は分かれた。

米国鉄鋼協会(AISI)は、トランプ政権の決定を支持した。米国への迂回輸出の経路として適用免除国が利用されることなどを防ぐために、「適用除外の国に対して数量割当を適用とする政権の姿勢を全面的に支持する」と述べ、その上で「オーストラリアの適用除外が、どのように232条の目的に寄与するかを示す(政権の)追加情報を期待している」とした(プレスリリース)。オーストラリアは、鉄鋼とアルミニウムの追加関税の適用免除となったが、その理由となった長期的な代替策の合意内容はまだ示されていない。

一方、米国アルミニウム協会(AA)は、「232条の関税適用を、主要な貿易相手国にまで拡大した政権の発表に失望している」と批判した。米国の貿易救済措置は中国の過剰生産問題に限定したものであるべきで、過剰生産問題への対処こそが米国のアルミニウム産業の繁栄につながり、商務省が232条調査で特定した安全保障に対する懸念の解決につながるとしている。アルコアなど米国のアルミニウム企業はカナダで生産を行っており、同国とのサプライチェーン維持を求めてきた(2018年2月26日記事参照)。

カナダへの関税適用を受け、USWも反対に

これまでトランプ政権の決定を支持してきた全米鉄鋼労働組合(USW、注)も、カナダが追加関税の適用対象となったことを受け、「この決定を受け入れることはできない。政権の通商政策の内容と方向性に、深刻な疑問を投げ掛けるものだ」と痛烈な言葉で批判した。「政権の決定と政策の背景にある論拠を理解することが、極めて難しくなってきている」と、トランプ政権の通商政策を批判する側に回った。

ケビン・ブレイディ下院歳入委員長(共和党、テキサス州)も「不公正な鉄鋼やアルミニウムの貿易は中国によるものであって、メキシコ、カナダ、欧州は問題ではない」「安全保障上の重要なパートナーであるこれらの国々・地域との交渉と適用免除の継続を政権に要求する」と述べた。

全米商工会議所も、政権の発表前日の5月30日、関税適用対象国の拡大に反対する声明を出している。

(注)米国、カナダ、カリブ諸島に120万人の組合員を持つ労働組合。組合員は鉄鋼関係に限らず、全ての産業の労働者を対象にしている。

(鈴木敦)

(米国)

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