ローカルフードの外国人料理人、雇用禁止を検討中

(マレーシア)

クアラルンプール発

2018年06月27日

M・クラセガラン人的資源相は6月22日、マレーシア国内の全てのローカルフードレストランにおける料理人を、マレーシア人に限定する規制を導入することを発表した。国内の人手不足を補うため外国人労働者が料理人として多数働いていることを受け、外国人労働者数の削減を狙う。同規制は7月1日から開始される予定で、2018年末までの移行猶予期間が設けられたが、業界団体による強い反対で、発表の翌6月23日にクラセガラン氏は「(22日に発表した規制は)新政権の外国人労働者削減方針に沿った対応で、決定事項ではない」と述べた。

目的は外国人労働者の削減と食文化の保護

クラセガラン人的資源相は、今回の規制導入の理由として、(1)外国人労働者への依存率の引き下げと、(2)マレーシアの食文化の保護、の2点を挙げた。マレーシアの食文化保護という観点では、国内の人気観光地であるペナン州で、ローカルフードレストランや屋台の主要料理人をマレーシア人に限るという規制が2016年1月から導入されている。ペナン州では、マレーシアの代表的料理13種類に関して規制が適用されているほか、調理補助については外国人労働者の従事を認めている。

業界団体との対話直後の発表に疑問の声

6月22日の発表前には、クラセガラン人的資源相と複数の業界団体との間で同規制について協議する会合が開かれ、業界団体側からは「事業継続には外国人労働者の雇用が不可欠」として反対の声が上がったという。会合では、業界団体側が1週間かけて代替案を検討することで合意したが、会合直後に同相が7月1日からの規制導入を言明したため、業界団体側は驚きを隠せない様子だ(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙6月24日)。

現時点で同規制の施行スケジュールは未定となっているが、仮に施行されていた場合は発表から導入まで1週間程度しかない突然の制度変更となっていた。日系企業は前政権に対し、外国人労働者対策も含め、現行政策の変更に当たっては十分な準備期間を設けた通知と、実施のための猶予期間を設けることを要求してきた。今回の規制は日系企業に直接の影響はないものの、こうした突然の政策変更の発表は将来的なリスク要因になり得る。

日本食を含め外国料理は対象外

日本食はマレーシアでも人気が高まっており、地場経営のレストランも含めると約1,000店舗ある。特に、すし職人など専門技術が必要な料理人として、日本人料理人の需要が高まっている。今回の規制では、外国料理は「その料理に精通した人材を雇用する必要がある」として対象外にされているが、日系企業には日本人料理人のビザ発給などへの影響を懸念する声もある。また、日本食レストランにおいても、マレーシア人の雇用確保が難しく、外国人労働者を雇用しているケースも多い。今回の規制が、日本食を含む外国料理レストランや他業種などに波及した場合、日系企業へ与える悪影響は大きいと予測される。

(田中麻理)

(マレーシア)

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