コーポレートガバナンスコードが改定に

(英国)

ロンドン発

2018年07月23日

財務報告評議会(FRC)は7月16日、コーポレートガバナンスコード(企業統治の指針、以下CGコード)(注)の改定を発表した。CGコードは、1992年にキャドバリー・レポートとして発表されて以降、ほぼ四半世紀にわたって発展しており、FRCが所管するようになった2010年以降は、ほぼ2年ごとに改定されている(前回の改定は2016年4月)。

今回の改定は、CG改革を主要政策課題の1つに掲げるテレーザ・メイ政権の発足後初めての改定となる。ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2016年11月と2017年8月に、従業員の経営への参画や役員報酬への監視強化などを含むCG改革提案書を発表していた。

従業員の経営参加を含む4点を重視

本改定の主な変更点として、(1)企業、株主および利害関係者(ステークホルダー)間の関係強化、(2)健全な企業文化に沿った明確な目的と戦略、(3)取締役会の人員構成の質の向上と多様化、(4)釣り合いが取れ、長期的な成功につながる報酬体系、の4つの点を重視していることが挙げられる。新CGコードは前述のBEISによる提案を反映しており、(1)については企業自身に3つの選択肢の中から選ばせるかたちで従業員の経営参加を求め、(4)では、報酬委員会の設置による監視強化を求めている。新CGコードについて、FRCのウィン・ビショフ会長は「より簡潔かつ明確なもの」だとしている。

グレッグ・クラークBEIS相は、新CGコードは英国のビジネス環境をより高い水準とするものだとして歓迎の意を示した。また、英国産業連盟(CBI)や英国経営者協会(IoD)も改定を歓迎し、従業員の経営参加促進を求める点を評価した。しかし、英国労働組合会議(TUC)のフランシス・オグレイディ書記長は「十分とは言いかねる内容で、メイ首相が公約した『企業を揺さぶる』というレベルではない」と強制力に欠ける点に不満の意を表し、従業員の経営参画を企業に義務付けるよう求めた(「フィナンシャル・タイムズ」紙および「インデペンデント」紙7月16日)。

新CGコードは、2019年1月1日以降に開始される会計年度から適用される。また議会では、BEISが2018年6月に提出した大企業(従業員数250人以上)を対象に最高経営責任者(CEO)と一般従業員の報酬の比率を公表するよう義務付けることを含む2018年会社(その他の報告)規則案が審議中で、成立すれば2019年1月1日以降に開始される会計年度から適用される見込みだ。

(注)英国のCGは、法律と法的拘束力がないCGコードの組み合わせにより運用され、CGコードは「コンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、説明せよ」」という原則を持つことを大きな特徴としている。多様な企業に同一の規範を押し付けることはCGコードの効果的実践につながらないとの認識に基づくが、企業に逃げ道を与えているとの批判もある。

(岩井晴美)

(英国)

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