ハードブレグジットはドイツ自動車産業に影響大、経済研究所が発表

(ドイツ、英国)

デュッセルドルフ発

2018年10月18日

ケルンのドイツ経済研究所(IW Köln)は10月9日、英国のEU離脱(ブレグジット)によるドイツ企業への影響に関する調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同調査によると、今後、自由貿易や関税に関する何らかの協定に合意せず英国がEUを離脱(ハードブレグジット)し、両国間の貿易に対しWTOの協定税率が適用された場合の1次効果(注1)として、ドイツのGDPは最大0.1%減少するとし、ドイツ企業が英国に支払う関税は33億ユーロに上るとの推測を示した(表参照)。

同調査によると、現在、英国はドイツ企業にとって米国およびフランスに次いで3番目に重要な市場で、ドイツの経済活動が生む付加価値の約5%は直接的または間接的に英国との貿易と関連している。ドイツの英国向け輸出にかかる関税率の加重平均値(注2)は4.3%、自動車分野では8.4%になるとしている。ドイツの英国輸出では自動車分野が占める割合が大きく、英国がドイツからの輸入で得る関税の61.3%、総額20億ユーロが、自動車分野から生じる。また、関税や非関税障壁の出現、およびそれに伴う調達コストの上昇と対応するサプライチェーンの変更など2次効果を含めた試算によると、最悪のシナリオの場合、合意なき離脱により、中長期的に、EU・英国間の貿易は最大50%減少し、ドイツの英国向け輸出は最大57%減少する可能性がある、との見通しが示された。

表 ハードブレグジットの場合の英国のドイツからの輸入にかかる関税総額予測

ドイツ最大の経済団体であるドイツ産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング事務局長は「(離脱協定の合意が得られない場合、)欧州は深刻な危機に見舞われる可能性が高い」と強調した。また同氏は、合意なき離脱に備え、英国における生産停止を発表する企業や、本社機能の大陸側への移転および新たな輸送路への変更を行う企業が既に出てきている、と指摘した。

(注1)関税増加による調達コスト引き上げやそれを避けるためのサプライチェーンの変更などを加味しない直接的効果。

(注2)貿易品目別金額で重みづけをした平均値。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ、英国)

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