首相解任、ラージャパクサ前大統領が後任に

(スリランカ)

コロンボ発

2018年10月29日

マイトリパーラ・シリセナ大統領は10月26日、マヒンダ・ラージャパクサ前大統領を首相に任命し、ラニル・ウィクラマシンハ統一国民党(UNP)総裁に首相解任を正式に通知した。併せて、シリセナ大統領が党首を務めるスリランカ自由党(SLFP)を中心とする統一人民自由連合(UPFA)は、UNPとの連立政権から離脱すると宣言。2015年1月に「打倒ラージャパクサ」で集結した連立政権は、思わぬかたちで終焉(しゅうえん)を迎えた(注)。

連立政権内で経済政策を担当しているUNPは、シンガポールとの自由貿易協定(FTA)やインドとの経済関係強化を推進してきた。シリセナ大統領をはじめSLFPはこれに反対しており、対立構造が定着化していた。輸出促進によってスリランカ経済の立て直しを図るUNPに対して、SLFP側は国内産業保護を主張し、決まりかけていたインド関連のプロジェクトが大統領の反対によって破棄される事案が複数に及んでいた。

ラージャパクサ新首相は2015年1月の大統領選挙に敗れたものの、同年8月の国会議員選挙でUPFAの候補者として当選。UPFA内部のラージャパクサ派(JO)は拡大し、ラージャパクサ氏が後ろ盾となっているスリランカ人民党(SLPP)は、2018年2月の地方選挙において340選挙区中232で当選、過半数を獲得した。JOが3月に提出した首相不信任動議は否決されたものの、 一部のSLFP議員の離脱により連立政権の弱体化は進んでいた。

一方、ウィクラマシンハ前首相は、「大統領に首相の解任権はない。国会で不信任投票を実施して決めるべき」と主張し、解任の違憲性を訴えている。現行憲法は2015年、大統領の権限縮小と首相や国会の権限拡大を目的に改正され、大統領は首相の解任権を有しておらず、今回の解任は違憲性があるとみられる。

シリセナ大統領は国会の会期を11月16日まで延長したため、政治空白はさらに続く見込みで、11月上旬に予定されていた2019年度予算案の提出も延期される見通し。なお、首相解任をめぐって暴動が発生、2人の死者が出るなど、企業活動への影響が懸念されている。

(注)スリランカではウィクラマシンハ前首相率いるUNPが第1党、シリセナ大統領率いるSLFPが第2党。ラージャパクサ新首相は元SLFP党首。2015年大統領選では、UNP中心の野党連合が当時のシリセナSLFP幹事長を支持し、以降UNPとSLFPの大連立政権となっていた。

(荒井悦代、井上元太)

(スリランカ)

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