NAFTA再交渉決着、カナダは乳製品市場のアクセスで譲歩

(カナダ、米国、メキシコ)

トロント発

2018年10月02日

カナダと米国との北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉は、9月30日夜に決着した。同日深夜に発出されたクリスティア・フリーランド外相とロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は3カ国の労働者、農業者、牧場経営者、企業に対し、より自由な市場、より公正な貿易、堅調な経済成長をもたらす高水準の貿易協定であり、中産階級を強化し、3カ国に暮らす約5億人のために、賃金の高い雇用の機会を創出することになる」とうたわれている。

カナダ側にとって課題となっていたアンチダンピング(AD)税および相殺関税問題に関する審査および紛争解決(NAFTA第19章)、文化産業保護の例外措置は維持されることとなったが、米国のカナダ乳製品市場へのアクセスについては、米国側に譲歩をした。また、米国とのサイドレターにおいて、米国が1962年通商拡大法232条に基づき自動車・同部品へ追加関税を発動する場合も、カナダから米国に輸出するライトトラック、年間260万台の乗用車、年間324億ドルの自動車部品については対象外とすることで合意した。

知財保護期間の延長などでもカナダ側が譲歩

そのほか、カナダ側が譲歩した事項としては、自動車・同部品の域内原産地比率の62.5%から75%への引き上げや、医薬品特許の保護期間の8年から10年への延長、著作権保護期間を著作者の死後50年から70年に延長、オンライン商品をクロスボーダーで購入する際の免税額を20カナダ・ドル(約1,780円、Cドル、1Cドル=約89円)から150Cドルに引き上げ、ブリティッシュ・コロンビア州の一般小売店で認められている同州産ワインの販売許可制度の廃止などがある。

貿易相手国の多角化の必要性を指摘

カナダ商工会議所のペリン・ビーティー会頭による声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「今回の協定の合意で一歩前進はしたが、協定の最終評価をする前に詳細を精査する必要がある」と述べ、具体的には、USMCAが鉄鋼やアルミニウム製品に対する関税をどのように扱っているのか、自動車への関税が回避できるのか、乳製品や政府調達を含めた特定の分野をどのように扱っているのか確認する必要があるとしている。そして、今回のNAFTA再交渉のプロセスを踏まえ、「特定の国との貿易に過度に依存することのリスクを減らすために、市場の多角化を進める必要がある」との声明を発表している(9月30日付カナダ商工会議所プレスリリース)。

また、カナダ酪農家協会(DFC)のピエール・ランプロン会長による声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいては、「カナダ政府は最終交渉を行う時期になると、今回もまた国内の乳製品生産を犠牲にした」と述べ、EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に加えて、USMCAでもカナダ政府が乳製品分野で譲歩したことに失望感を示した(10月1日付DFCプレスリリース)。

(酒井拓司)

(カナダ、米国、メキシコ)

ビジネス短信 eedba18642b80542