欧州議会の国際貿易委、日EU・EPA勧告案を採択

(EU、日本)

ブリュッセル発

2018年11月06日

欧州議会の国際貿易委員会は11月5日、日EU経済連携協定(EPA)についての欧州理事会決定に関する勧告案を採択した。12月10~14日に予定されている欧州議会本会議で採決することになり、承認されれば、EU側での同協定発効に向けた準備が整うことになる。

採択の背景にEU側の期待と思惑

日EU・EPAをめぐる欧州議会における審議で、主担当の報告者を務めたペドロ・シルバ=ペレイラ議員〔ポルトガル選出、中道左派「社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)」所属〕は「今回の同協定支持の採決は、ルールに基づく公正な貿易に向けた強力なシグナルとなる。この採択を通じて、労働者の権利保護や環境基準の順守、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を担保するなど、同協定の潜在的な効果の実現を目指し、双方が責務を果たすことを求める」と評した。同議員は9月18~20日に欧州議会議員団の一員として訪日しており、ILOの求める中核的労働基準を定めた条約のうち、日本が批准していない「強制労働の廃止に関する条約(第105号)」および「雇用および職業についての差別待遇に関する条約(第111号)」について、日本の批准を求めている。

また、同国際貿易委員会は、日本に輸出しているEU企業の78%が中小企業であることを念頭に、「同協定の効果が迅速に中小企業にも及ぶように、欧州委員会に中小企業向けの窓口の開設を求める」としている。

なお、日EU・EPAをめぐっては、欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体であるCOPA-COGECA、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)およびフード・ドリンク・ヨーロッパの欧州農産・食品・飲料産業界を代表する3団体が10月31日付で、欧州議会国際貿易委員会における採択を求める声明を発表していた。3団体は日本を「今後の成長が期待できる戦略的輸出市場の1つ」と位置付けており、日EU・EPAはアジア大洋州地域における欧州産業の競争力強化につながると指摘。今回の国際貿易委員会における採択が「12月に想定されている欧州議会本会議での最終採択に向けて重要な一歩となる」との認識を示している。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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