新政権下でのTPP11批准のめど立たず

(マレーシア)

クアラルンプール発

2018年12月28日

12月30日の環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)発効を前に、マレーシアにおける批准のめどは立たないままだ。これまでの経緯をみると、協定署名前の3月6日、国際貿易産業省(MITI)のムスタパ・モハメド大臣(当時)は「2019年2月までに国内手続きを完了する」と発表した(国営ベルナマ通信3月6日)。その後、5月9日の総選挙によってマハティール政権が誕生し、ナジブ前政権下で署名されたTPP11への参加がマレーシアにもたらす利益について再検討を行うとして、今後の方針は一時保留された。

民族間の富の分配を検証

マハティール首相は8月27日、「国家の信用を失わないためにも、TPP11からの離脱はできない」と発言し(「ザ・スター」紙8月27日)、批准に向けた国内手続きを進めることが明確になったかと思われた。しかし、首相は9月1日には「TPP11において、多くの分野でマレーシアが不利益を被る」として、再交渉も検討する姿勢を示した。また9月27日、「TPP11参加の是非については検討中で、まだ最終判断はできない」と発言したほか、3度目の訪日となった11月7日にも、「民族間の富の分配への影響を検証している」として、まだ検討段階であることを明らかにした。

政府の最終決定には時間を要するもよう

この背景には、4党の連立政権である与党内での意見の食い違いもあると推測される。反対派は、人民正義党(PKR)のヌルル・イザ・アンワル議員を筆頭に、前政権による不透明な交渉経緯への批判、薬価の上昇や投資家対国家の紛争解決(ISDS)条項に対する懸念(注)を表明している(「ニュー・ストレーツ・タイムズ」紙8月16日)。他方、MITIのオン・キアン・ミン副大臣は「ISDSや知的財産保護に関する条項は米国の離脱により凍結され、マレーシアにとっては好都合だ」として、TPP11による影響は限定的だと述べている(「マレーメール」紙11月9日)。

MITIのダレル・レイキン大臣は11月28日、TPP11による影響調査は継続中であり、「TPP11への参加に関する最終判断に期限は設けない」と発言した(国営ベルナマ通信11月28日)。マレーシアがTPP11協定をいつ批准するかどうかは、2018年12月の現時点でも依然不明瞭であり、政府の正式な決定にはさらに時間を要することが懸念される。

(注)「医薬品および医療機器に関する透明性および手続きの公正な実施」、ISDS条項関連は凍結項目とされているが、将来的な影響を考慮した上での反対と考えられる。

(田中麻理)

(マレーシア)

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