TPP11発効重視のオーストラリア、カナダやメキシコへのアクセスを強調

(オーストラリア)

シドニー発

2018年12月27日

オーストラリアは、2018年10月17日に国会で環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)関連法案を可決(2018年10月19日記事参照)、同月31日に国内手続きを完了した(2018年10月31日記事参照)。同国とTPP11参加国との貿易額は1,710億ドルで、同国の貿易総額の22.4%を占める。

オーストラリアは、日本と共にTPP11発効に向けて尽力してきた。2018年11月16日の日豪首脳会談(2018年11月19日記事参照)の共同声明によると、両首脳は「保護主義への懸念が高まる中、自由貿易の重要性を支持し、国際貿易自由化を促進するため連携する」「CPTPPの拡大を通じ、自由市場をインド太平洋地域の内外に拡大させていく」とした。

また、モリソン首相とバーミンガム貿易観光投資相は10月31日、TPP11に関して、下記の内容を含む共同声明を発信していた。

  • オーストラリアの農業従事者とビジネス界は、12月30日の関税削減、2019年1月1日に2回目の関税削減という恩恵を享受できる(注)。
  • 2030年までに、オーストラリア経済に年間156億ドルの恩恵をもたらす。
  • カナダ、メキシコという経済規模で世界20位に入る国との初の自由貿易協定(FTA)。カナダに対しては穀物、砂糖、牛肉など、メキシコに対しては豚肉、小麦、砂糖、大麦などの輸出機会が増大する。
  • 日本に対しては牛肉、小麦、大麦、乳製品について、日豪経済連携協定(EPA)よりも輸出機会が増大する。
  • 鉄鋼、皮革、紙、医療機器などの輸出企業は、関税上の不利益を被ることがなくなる。

多国間での付加価値の足し上げ効果のメリットが大

2015年1月に発効した日豪EPAは活用が進んでいる。ジェトロの「2018年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、在オーストラリア日系企業で日本へ輸出している企業の26.8%、日本から輸入している企業の54.4%が日豪EPAを利用している。

2018年12月17日、在日オーストラリア大使館が東京で主催した「CPTPP活用セミナー」において、ジェトロの長島忠之・上席主任調査研究員は「日豪EPAでの関税削減は5回目を終えており、(オーストラリア側では)大部分の品目の関税が5回目で撤廃されているが、アパレル、履物など一部の品目で関税は残っている」と解説した。

また、長島上席主任調査研究員は、「日豪EPAでは、原産地規則を満たす上で付加価値の足し上げが2国間でしかできなかったが、CPTPPでは、多国間で足し上げができるメリットが大きい」「足し上げの仕方もビジネスフレンドリーで、原産地規則を理解すると使いやすい」とした。

(注)日本の2回目の関税削減のスケジュールは4月1日から。

(中里浩之)

(オーストラリア)

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