カナダの植物油と牛肉業界はTPP11発効で期待感

(カナダ)

トロント発

2018年12月27日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の12月30日発効で恩恵を受けるカナダの国内産業としては、植物油業界が挙げられる。カノーラ油(菜種油)の対日輸出に際しては、現在1キロ当たり10.90~13.20円の関税がかかっているが、TPP11発効後に段階的に引き下げられ、5年以内に関税が撤廃される。このため、カナダ・カノーラ協議会では「5年後には70万トンのカノーラ油を輸出できる」と予測している。

2017年のカノーラ種の菜種の対日輸出額は年間65億5,200万カナダ・ドル(約5,373億円、Cドル、1Cドル=約82円)だが、粗油、精油での輸出(からし油なども含む)は800万Cドル(4,161トン)にすぎない。同協議会は、70万トンの菜種油の精製のためには新たに工場を建設する必要性を認識しているが、連邦政府は精油工場での製造、加工用の機械・設備導入に関わる費用の全額償却というインセンティブを発表しており、このような制度も活用して、カナダの精油能力は5年間で拡大することが期待される。

日本の牛肉関税は16年目に9.0%まで低減

このほか、牛肉・豚肉の生産団体もTPP11の発効を期待している。カナダ畜牛協会(CCA)によると、TPP11の発効時点では、38.5%の牛肉の関税は27.5%に下がり、16年目に9.0%まで低減される。同協会のデビッド・ヘイウッドファーマー会長は「2011年以来、CCAはTPPへの加盟を支持してきた。それが、日本の38.5%の関税に対処するための最善の道筋と見なしていたからだ。カナダの牛肉生産者に対する市場の多様化と、日本の関税引き下げの可能性を強く感じていた」と語った(CCAプレスリリース)。

カナダ自動車工業会、自動車分野での合意内容は不十分と指摘

自動車分野では、カナダ政府と日本政府は自動車の安全・環境基準に関し、11月29日に交換公文を交わしている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。それによると、日本の輸入自動車特別取扱制度(PHP)の下で認証されるカナダ製自動車については、騒音および排ガス試験に関する簡素化された手続きを活用することができる。また、米国の自動車安全基準(FMVSS)要件のうち、国土交通省が、対応する日本の規則よりも緩やかなものでないと認める場合には、当該FMVSS要件に適合するカナダ製自動車についても、日本の安全基準規則に適合するものと見なすというものだ。

しかし、この交換公文について、カナダ自動車工業会(CVMA)のマーク・ナンテ会長は「われわれは、完全かつ相互主義的な市場アクセスを求めているが、これまでのところ、その状況には至っていない」とコメントした。また、カナダ政府が米国より厳しい安全基準要件を課した場合に、その要件が日本の要件に適合すると見なされるのか不明で、ナンテ氏は「この交換公文が最善の手段とは思わない」と述べている(CBCニュース12月15日)。

一方、カナダ日本自動車工業会(JAMAカナダ)のデビッド・ワーツ専務理事は「北米の自動車メーカーが日本に輸出ができていない理由は、日本市場の非関税障壁というよりは、日本の消費者が求めている低燃費の小型車を造っていないことが主な理由だ」としている(CBCニュース12月15日)。

(酒井拓司)

(カナダ)

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