中国の米国産原油輸入再開の見通し立たず

(米国、中国)

米州課

2019年01月08日

米国にとって、中国はカナダに次ぐ2番目の原油輸出相手国だが、米国エネルギー情報局(EIA)の統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国の対中原油輸出は2018年6月に過去最大の日量51万3,000バレルを記録したものの、米中貿易摩擦が高まる中で、8月以降はゼロに落ち込んでいる。

他方、中国の原油輸入は2018年11月には前年同月比8.5%増の日量1,043万バレルと、過去最大を記録した。低油価が続く中で、中国石油化工(シノペック)、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国海洋石油(CNOOC)の大手国営石油企業が中国国内の原油生産を抑制する一方、ティーポットと呼ばれる独立系の地方製油所が海外からの原油輸入を牽引したからだ。中国は国別の原油輸入量を明らかにしていないが、中国の輸入需要を満たしたのはロシアやサウジアラビアといわれている。

12月1日の米中首脳会談により米中間の貿易摩擦が一時休止し、ホワイトハウスの声明では、中国側が米国産の農産物やエネルギーなどの購入拡大に同意する見込み(2018年12月5日記事参照)と伝えられたが、中国が米国からの原油輸入を再開する見通しは立っていない。最大の理由は、米国メキシコ湾岸から原油を輸送するコストが中東産原油の輸送コストと比べて3倍近く高いためで、米国産原油よりも中東、オーストラリア、ロシア産原油の輸入の方が中国側にとって経済合理性が高い。このため、中国が米国からの原油輸入を拡大するかどうかは、中国政府の政治的判断にかかっているとみられる。中国企業が輸入タンカーの手配を進めるに当たって、米中の交渉期限である2019年3月1日は極めて厳しい。中国が対米原油輸入を早期に拡大するかは不透明だ。

(木村誠)

(米国、中国)

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