日ASEAN新産業創出実証事業で報告会、タイの課題解決図る

(タイ)

バンコク発

2019年01月04日

ジェトロは、「日ASEAN新産業創出実証事業」として、デジタル、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)、サービスをはじめとした新産業分野での、日本企業とASEAN企業の連携事業の促進や実証を進めている。そのような中、ジェトロ、経済産業省、日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)とAOTS(海外産業人材育成協会)は2018年12月18日、バンコク市内において、同事業の成果報告会を開催した。同事業における18の事業のうち、8つはタイ国内で行われており、さまざまな分野での課題解決を図っている。

タイにおける実証事業のうち、デンソーは、タイにおけるモノづくりの高度化、自動化を促進することを目的とした大学教員、学生、中小企業などに対する人材育成プロジェクト「LASI(Lean Automation System Integrators)」プロジェクトについて報告した。このプロジェクトは、ロボットなどを活用した手組み、半自動、全自動の製造ラインを用いて、効率的なモノづくりの仕組みについて人材育成することで、タイの課題である製造業の生産性を向上させるものだ。デンソーは、タイ工業省などと覚書を締結し、タイ工業省が所管するITC(Industrial Transform Center)において同事業を実施しており、今後、2019年中にLASIのカリキュラムの標準化などを行うことにより、普及を目指している。

また、富士フイルムは、医療機関と協力して実施している再生医療の実証について報告した。同実証では、再生医療の潜在需要の調査、タイの病院における再生医療治療の手技の研究会開催などを行い、膝軟骨の欠損、皮膚治療、がん免疫など、タイでは行われていない日本の最先端の医療技術のタイへの浸透を図っている。タイには既に、ASEAN地域における医療ツーリズムの地域拠点として、高度医療を提供する医療機関が数多くあることに加え、タイ政府がEEC(東部経済回廊)政策で関連投資の誘致に力を入れるなど、再生医療ビジネスが成り立つ環境は整っている。一方、再生医療に関する法制度が未整備なことや、タイ語のみで発出されている法令・規制が多いことから、タイ政府に対して、英語による情報発信の必要性が課題とされ、同社は引き続き、タイ関係省庁と議論を重ねることで、これら課題の克服を目指すとしている。

そのほか、NTTデータなどが報告を行った。同報告会には、工業省工業振興局のコブチャイ・スンシティサワット局長ら関係省庁の職員、タイ産業界、在タイ日系企業から約110人が参加した。

(ナオルンロート・ジラッパパー)

(タイ)

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