病欠最初の3日間の手当支給が復活

(チェコ)

プラハ発

2019年01月25日

下院は1月22日、上院が差し戻した労働法改正法案を再び可決した。大統領の署名を経て、7月1日に発効する。この法案は、被雇用者の病欠最初の3日間に対する手当支給の復活を定めたものだ。

病欠手当は、もともと全期間を対象に国家が支給していたが、2006年に最初の14日分について雇用者負担に移行した(2006年3月23日記事参照)。2009年には、病欠最初の3日間の手当支給が廃止された(2009年7月15日記事参照)。

今回可決された法案は、この3日間の病欠手当を再び雇用者負担で、賃金基本額の60%支給することとし、同時に雇用者負担の病欠保険料を現在の2.3%から2.1%に引き下げることを規定している。

病欠最初の3日間に対する手当支給の再導入は、アンドレイ・バビシュ首相率いる政党ANO2011(ANO)がチェコ社会民主党(CSSD)との連立交渉で妥協した点の1つで、政府綱領にも明記されている。同首相は制度乱用を抑制するため、病欠手当支給に必要な医師の証明書の電子発行システム導入の必要性を強調しているが、現在のところ制度導入には至っていない。

雇用者代表の団体である産業連盟は、医師の証明書の完全電子化以前に、病欠無給期間を廃止することに危惧を表明している。また、空前の人材不足、賃金急増の状況下、病欠手当無給期間廃止は企業に過大な負担増を強いると主張している。同連盟は1月22日の声明で、「無給期間廃止により、病欠率が年間2~3%上昇すると仮定すると、病欠者をカバーするための超勤代、臨時社員の賃金など、全企業が負担する人件費は総計80億コルナ(約384億円、1コルナ=約4.8円)増大すると見積もられる。病欠保険料の0.2%幅の負担減は30億コルナ程度であり、企業は約50億コルナのコスト増を強いられることになる」と指摘、さらに「企業の中には、法定日数を超える有給支給を減らすなど、福利厚生制度の見直しや賃金引き上げの制限を行うところも出てくるだろう」として、労働者にも悪影響を及ぼすと警告した。

(中川圭子)

(チェコ)

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