ナコンラチャシマ、アクセス改善で外資の新たな受け皿に

(タイ)

企画部海外地域戦略班

2019年03月12日

タイ運輸省によると、バンコクとナコンラチャシマを結ぶ高速道路は、3月4日時点で60%の区間の工事が完了し、2020年半ばに開通予定となった。開通すると、この区間の所要時間は現状の4時間前後から、2時間半前後に短縮される見込みだ(注1)。

タイ東北地方の玄関口であり、バンコクに次ぐ国内2位の人口を誇るナコンラチャシマ県は、バンコクからのアクセスの着実な改善に伴い、国内外企業が新たな生産・販売拠点の立地先として関心を高めている。

同県の中心部で、バンコクから約230キロに立地するナワナコン第2工業団地には、キヤノンやフコクなどの日系メーカーが生産拠点を有する。県内には、国立スラナリー工科大学や国立ラジャマンカラ工科大学(イサーン校)、国立教育大学などに加え、工業高校も多く、同工業団地内の企業に優秀な労働力を輩出している。

この工業団地に約20年前に進出し、現地でプレス加工、金型設計・製作などを行う日系メーカーによると、バンコク首都圏や東部経済回廊(EEC)と比べ、ナコンラチャシマのビジネス環境は大きく異なるという。同メーカー担当者は「豊富な労働力がこの地域の大きな魅力で、首都圏で問題になっている人材不足は当地では全く実感がない。人材募集はすぐに定員に達する状況だ。大卒人材は優秀で、おおむね1年以内でCAD/CAMによる複雑な金型設計を担うレベルに成長する」と評価する。

ナコンラチャシマ県議会や同県商工会議所、タイ工業連盟支部など主要経済団体の幹部は、県内への企業立地の特徴について、「EECが最先端技術を有する大規模投資案件を誘致する一方、EECから外れる本県は、自動車部品や電気・電子機器のサプライヤー、中小企業、または労働力を必要とする産業の魅力的な受け皿になっている」と話す(注2)。また、政府がバンコクから同県を経由してラオス、中国・昆明までを結ぶ高速鉄道や高速道路の建設計画も進めている中、「内陸コンテナデポや国際空港を整備し、近い将来、バンコクとタイ北部、ラオス、中国を結ぶロジスティクスハブとしての機能を担うことになる」と展望する。

バンコク~ナコンラチャシマ間の約253キロを結ぶ高速鉄道建設に関しては、2021年までの完工を目指して工事が進められているものの、進捗の遅れが報告されている(2019年3月4日記事参照)。

(注1)タイ投資委員会(BOI)主催の大規模シンポジウム「タイランド・インベストメントイヤーの今」での運輸省発表資料外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますより。

(注2)3月7日にナコンラチャシマ県庁で実施された、日本の報道関係者と同県産業団体との意見交換会での発言に基づく(意見交換会は日本アセアンセンターとタイ投資委員会が主催)。

(伊藤博敏)

(タイ)

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