予算責任局、2019年度の成長見通しを引き下げ

(英国)

ロンドン発

2019年03月18日

英国の予算責任局(OBR)は3月13日、経済・財政見通しを発表した。それによると、2018年度(2018年4月~2019年3月)の実質GDP成長率は前回予測(2018年11月2日記事参照)の1.3%から0.1ポイント増となる1.4%、2019年度は前回予測の1.6%から0.4ポイント引き下げた1.2%となる。2020年度以降はEU離脱(ブレグジット)の不確実性が消え、生産性の改善が徐々に見込まれることから、2020年度は1.4%、2021年度は1.6%と予測している。消費者物価指数上昇率は2020年度以降、イングランド銀行が目標水準とする2.0%に収束する見込みだ。

表1 経済見通し

財政構造をみると、政府純借入は2019年度に293億ポンド(約4兆3,364億円、1ポンド=約148円)と予測するが、2020年度以降は減少し、2023年度には135億ポンドと過去22年間で最も低い値とする。また、公共部門純債務のGDP比率も年々減少見込みで、2019年度の82.2%から2023年度には73.0%にまで下がるとした。

表2 財政見通し

同日に春の予算演説を行ったフィリップ・ハモンド財務相は、賃金の上昇や低い失業率がベースとなり経済は成長を続けると強調した。失業率は4.0%と1975年以降で最も低く、今後5年間もこの歴史的な低水準が続く見込みだ。賃金上昇率はインフレ率を上回る勢いで上昇し、2023年までに新たに60万人の雇用が創出されるとした。政府は2018年度から最先端の科学技術への投資を実施、その成果として高度熟練労働者の輩出や生活水準の向上が見込めるとし、企業と大学などの研究機関との連携を歓迎した。また、ブレグジットを踏まえて、英国をオープンで競争力のある国にすること、クリーン成長(環境配慮)の促進、教育や技術レベルの向上、住宅やインフラなどへの投資について言及した。

ハモンド財務相はブレグジットについて、合意による離脱の場合、企業景況感や投資の回復が見込まれ、財政構造の改善が進むことから、緊縮財政の終了につながるとした一方、合意なき離脱(ノー・ディール)の場合は、経済が短期・中期的に大きな混乱に陥るとした。英国商工会議所(BCC)は、企業は突然の変化への準備はできていない、議会はノー・ディールを避けるべきとした。また、企業による投資の減少は生産性の改善や成長軌道を制限するものと警鐘を鳴らした。

(鵜澤聡)

(英国)

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