世界銀行、2019年のGDPをマイナス25%と予測、停電継続で経済損失に懸念

(ベネズエラ)

ボゴタ発

2019年04月12日

世界銀行ラテンアメリカ・カリブ・チーフエコノミスト室は4月4日に半期レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開し、ベネズエラの2018年の実質GDP成長率が前年比マイナス17.7%、2019年はマイナス25%と、2013年比60%減になると予測した。ベネズエラでは、3月7日から約1週間に及ぶ全国規模の大停電が起き(2019年3月12日記事参照)、同月25日正午ごろにも停電が発生し、ほぼ3日間にわたり電気のない状態が続いた。いったんは回復したものの、29日夜から30日朝まで、さらにその後も1日数時間程度の停電が繰り返しており、完全回復と言えない状況が続いている。ニコラス・マドゥロ大統領は3月31日、電力システムの回復を目的に、30日間の計画停電の実施を発表した。また、水の供給にも問題が生じており、4月5日現在も止まったままの地域があるようだ。

停電によりベネズエラが受ける経済的な損失について、商工会議所連盟(Fedecamaras)のカルロス・ララサバル会長は、1日当たり約2億ドルに上るだろうとしている。また、3月の一連の停電による直接的な影響で、世界銀行予測よりもさらにGDPを1~2.5ポイント引き下げるとみている。

大統領反対派への圧力は強まる

マドゥロ政権はこうした危機的な状況でも、なお大統領反対派にかける圧力の手を緩めていない。3月21日にフアン・グアイド国民議会議長の右腕と言われるロベルト・モレロ弁護士が親マドゥロ派情報機関SEBINにより身柄拘束されたほか、同28日には会計検査院がグアイド氏の海外渡航の資金の出所に疑義があるとして、同氏が公職に就く権利の15年間剥奪を言い渡した。また、制憲議会は4月2日、不逮捕を含む国会議員特権を同氏から奪う法令を承認した。米国による後ろ盾も持つグアイド氏に対し、マドゥロ大統領はロシアとの軍事協力を進展させている。3月にはロシア軍用機2機と99人のロシア軍人などがベネズエラ国内に到着したことが明らかになっており、同29日、政府はロシア製軍用ヘリコプターのパイロット訓練所をオープン。さらなるロシアからの軍事ミッションが到着予定だとしている。

一方、欧米や中南米、日本など50カ国以上から正式な大統領として承認されているグアイド氏は、制憲議会は元来違法であり、会計検査院も同議会から指名されていることから、自身の権利を剥奪する権利はないとして、相次ぐ圧力をはねつけている。同氏はハイパーインフレや物資不足、今回の大停電のような公共サービスの機能不全といった、国民に鬱積(うっせき)する日々の不満を集めるかたちでデモ集会を招集しているものの、現状では政権を揺るがすような有効な手段を打ち出せていない。反対派が求める自由で透明な大統領選挙の再実施への道のりはかなり遠いとする見方も出始めている。

(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)

(ベネズエラ)

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