ベルギー総選挙、極右が躍進、極左・環境政党も拡大

(ベルギー)

ブリュッセル発

2019年05月28日

ベルギー政府の5月27日時点の発表によると、前日投票の総選挙で左右両極と環境政党の議席が拡大した。連邦制を採るベルギーでは、連邦政府と、地理的区分に基づく地域政府(ブリュッセル首都圏、フランダース、ワロン)、言語に基づく共同体政府(オランダ語、フランス語、ドイツ語)が異なる管轄分野・地域の行政・立法権を保有している(フランダース地域政府とオランダ語共同体はフランダース政府として政府・議会を一体化)。連邦上院とフランス語共同体議会以外の議員は直接選挙で選出される。

連立交渉難航の恐れも

連邦議会下院では、2014年の総選挙後に連立を組んだ「新フランダース連合(N.V-A、地域主義)」と「キリスト教民主フランダース(CD&V、中道)」「フランダース自由民主(Open VLD、穏健リベラル)」「改革運動(MR、穏健リベラル)」は議席を減らし、合計議席数が過半数を割り込んだ(表1参照)。その一方、オランダ語系の極右政党「フランダースの利益(Vlaams Belang、VB)」が18議席(15議席増)を獲得して第3党に躍進。環境政党(「緑!」、「エコロ」)、極左の「労働党」もフランス語系を中心に議席を伸ばした。

表1 連邦議会下院(総議席数150)の選挙結果

この傾向は他の地域でも見られ、VBはフランダース議会(北部、オランダ語圏)でも第2党に躍進し、「緑!」と「労働党」も議席を伸ばす中、フランダース政府の連立与党(N.V-A、CD&V、Open VLD)は議席を減らした(表2参照)。

表2 フランダース議会(総議席数124)の選挙結果

ワロン地域(南部、主にフランス語圏)では、改選前に連立政権を組んでいた「MR」と「中道民主人道主義(cdH)」が議席を減らす中、「エコロ」と「労働党」が躍進(表3参照)。「社会党」(PS)は議席を大きく減らした。ブリュッセル首都圏地域(仏蘭バイリンガル)でも同様の傾向が見られた(表4参照)。

表3 ワロン地域議会(総議席数75)の選挙結果
表4 ブリュッセル首都圏地域議会(総議席数89)の選挙結果

複数のフランス語系政党がN.V-Aを敬遠する一方、一大勢力となった極右VBとの連立も難しく、今後の交渉は難航が予想される。Open VLDのグウェンドリン・ルッテン党首は選挙当日にVBとの連立を否定したが、他党が追随するか注目される。

(村岡有)

(ベルギー)

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