デジタル貿易のルール策定、ブラジル政財界の動き

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年05月28日

ブラジルでは、デジタル貿易や電子商取引(EC)に関する法的枠組みとして包括的なものは存在していないが、これらに関するブラジル政府の立場や産業界の反応は以下のとおり。

1.ブラジル政府の立場

以前から、情報の自由な流通、表現の自由、プライバシー保護といった基本的な概念を堅持し、WTOなど国際的な枠組みでの議論にも積極的に貢献してきた。直近では、2019年4月30日に電子商取引に関するルール策定に関する非公開の提案ペーパーをWTOに提出した旨をブラジル外務省が発表している。同外務省によれば、電子的手段を介した物品やサービスの取引は既存の協定でカバー可能だが、データ活用型のビジネスについては適用可能なルールが存在しないため、検討を行う必要があるとしている。

ブラジル政府の提案内容は非公開だが、同国が過去に提出した提案文書や報道、関係者の話を総合すると、ブラジル政府の立場は以下のようなものとされる。

  • 透明性、予見性のある規制体系と自由でオープンなインターネット環境構築を擁護
  • 個人情報、消費者情報の保護を優先に掲げつつも、消費者が同意する限りにおいて合法的な商目的のためにデータを使用できることの可能性を示唆
  • 電子署名、電子認証の許容、利活用
  • 電子的な送信に対する関税不賦課
  • ブラジル国内で収益をあげるオンライン・プラットフォーマー(フェイスブック、アマゾン、アリババなど)に対して、物理的拠点の有無によらず課税できる
  • オンライン・プラットフォーマーによる競争制限的行為の禁止

なお、国内サーバー設置義務、ソースコード開示要求に対しては、特段のポジションを示していない。

2.ブラジル産業界の反応

ブラジルの産業界は、デジタル貿易分野のルール策定の動きに対しては、基本的に歓迎の意向を示している。ブラジル工業連盟(CNI)は、WTOでの議論に対して、透明性、予見性、無差別性を持ったルール策定がされることや、企業活動とりわけ中小企業の活動にとって有益と考えられる新たな技術プラットフォームの導入を妨げないようなルール策定を求めている。

また、情報通信関連事業を行う日系企業からは、越境情報通信に対する課税の有無の動向、課税がされるとした場合には、課税するのはデータの出し手側国か受け手側国かなどが現地の実体ビジネスに直結するため関心を有している、との声が聞かれた。

(岩瀬恵一)

(ブラジル)

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