米中首脳会談、リスト4の追加関税発動は当面回避、ファーウェイ輸出規制の緩和示唆

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年07月01日

トランプ大統領と習近平国家主席は6月29日、大阪で開催されたG20サミット(首脳会議)の機会を利用し、米中首脳会談を開いた。トランプ大統領は会談後の会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、(1)米中貿易交渉の再開、(2)対中輸入額約3,000億ドル相当の追加関税対象品目であるリスト4の追加関税賦課の当面の延期、を表明すると同時に、(3)米国企業は国家の緊急的な問題に関連しない機材については華為技術(ファーウェイ)に売ることができるとし、同社への輸出規制の緩和を示唆した。また、(4)「中国はすぐに、米国から大量の食品、農産物を買うことになる」「われわれの農家は(本合意により)大きな利益を受けることになるだろう」と述べ、中国政府から米国の農産品の輸入拡大に関する何らかの合意を取り付けたことを明らかにした。

ただし、6月30日時点(米国時間)ではホワイトハウス、米国通商代表部(USTR)、商務省からは上記に関する公式な発表はなく、詳細は明らかになっていない。例えばファーウェイに関しては、米商務省が5月20日に同日から8月19日までの90日間は輸出規制を一部緩和しており(2019年5月21日記事参照)、トランプ大統領の規制緩和に関する発言との関係が明確になっていない。また同大統領は、エンティティー・リストからの除外については、今後、政府内で議論すると述べるにとどめた。リスト1~3の対中追加関税に関しては、引き続き追加関税は維持すると発言した。

米国の連邦議員は、トランプ大統領の発言に対して早速反応している。特に、議会が問題視しているファーウェイへの輸出規制緩和について、対中国強硬派で知られるマルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州)は、自身の6月29日付ツイッターで「大統領が対ファーウェイ規制で譲歩したのであれば、われわれは立法を通じて規制を戻す必要がある」と批判した。チャック・シューマー上院少数党院内総務(民主党、ニューヨーク州)も、同日付の自身のツイッターで「大統領が(ファーウェイ規制から)後ずさりするのであれば、中国の不公正貿易を変えることのできるわれわれの能力を著しく低下させることになるだろう」と不満を述べた。

米国商工会議所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは同日、米中首脳会談の結果について、両首脳が交渉のテーブルに戻り、新たな関税賦課を見送ったことを歓迎した上で、「中国は、米国企業の公正なビジネス環境を妨げる、長期にわたる不公正な貿易慣行および産業政策の是正にコミットすべきだ」とのコメントを発表した。そのほか、全米製造業者協会(NAM)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます米国半導体工業産業協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます情報技術産業協議会(ITI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどの業界団体もおおむね、米中貿易交渉の再開やリスト4の追加関税の実施の延期を評価しつつ、トランプ大統領の上記発言の詳細を米国政府に求めると同時に、中国の不公正な貿易慣行の是正を引き続き求める内容の声明を発表している。

(若松勇)

(米国、中国)

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