欧州委、乗客予約記録データ共有に関する対日交渉開始を勧告

(EU、日本)

ブリュッセル発

2019年09月30日

欧州委員会は9月27日、航空サービス事業者が保有する旅客の予約情報である「乗客予約記録(PNR)」データについて今後、日本との間で移転・活用するための協定に関する交渉開始の権限付与(マンデート)をEU理事会(閣僚理事会)に対して、勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。EU基本権憲章に沿って個人データ保護と基本的人権を尊重しつつ、テロ行為や越境重大犯罪に対する抑止・対策として、日本・EU間でのデータ交換・共有を可能にする法的基盤の整備を目指す。

SPAの条項を具体化,安全保障面で日EU連携強化を図る

今回の勧告は、EU・アジアの連結性強化をテーマに、安倍晋三首相を招きブリュッセルで同日に開催された「欧州コネクティビティ(連結性)フォーラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長が発表したもの。日本・EU間のPNRについては、2018年7月署名の「日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(第37条)にその利用に努める旨が盛り込まれており、今回の協定整備によって具体的な運用を相互に進めることになる。

欧州委のジュリアン・キング委員(安全保障同盟担当)は「PNRデータは不審な旅客の渡航パターンを特定し、テロリストや重大犯罪者を追跡する場合に役立つ。こうしたデータを緊密な関係にある日本のようなパートナー国と共有することは重要」と、協定の意義を強調した。今回の協定内容について、欧州委は「PNRデータの移転・利用の目的は、テロ行為やその他国境横断的な重大犯罪に対する抑止・対策のみに制限する」「特にPNRデータへのアクセスや処理は、テロ行為やその他国境横断的犯罪について抑止・捜査・調査・訴追する場合に限定する」「司法裁判所の判例に沿って、個人データと基本的人権の保護や個人の自由を尊重するために必要な、保護措置や統制を整備する」「旅客に対して行政的・司法的救済を十分に行う権利を非差別的に保障する」などの点に留意するとしている。

なお今後、EU理事会は、今回の欧州委の勧告について協議し、欧州議会の同意を得た上で、欧州委が日本政府と交渉開始する権限を認める決定を採択する見通し。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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