投資委員会が縫製産業の再生ロードマップ策定、ファストファッションに対抗

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月29日

投資委員会(BOI)は11月20日、フィリピンの縫製産業を持続可能な産業に再生するための10カ年計画となるロードマップを策定すると発表した。11月22日付の地元各紙が報じた。

BOIのコラゾン・ディチョザ氏は、12月にマニラ首都圏で開催される縫製関連の展示会「フィリピン・ガーメント・レザー・インダストリーズ・アンド・テキスタイル(PGLIT)エキスポ2019」において、2029年までの10カ年計画を発表するとした。ディチョザ氏は、東南アジア域内の縫製産業の競争は近年、ますます激しくなり、特にファストファッションに代表される低価な製品の製造国としての地位をフィリピンは確保できなくなっているとし、より付加価値の高い高価な製品の生産国にシフトする必要があるとした。また、衣料品輸出業者連盟(CONWEP)の資料によると、フィリピンの衣料品製造業のワーカー賃金は月給190~274ドルなのに対して、ミャンマー、カンボジア、ベトナムはそれぞれ85~95ドル、147~170ドル、146~167ドルと低い。

フィリピンの製造業の中で、縫製産業だけが唯一その粗付加価値(GVA)を近年減少させており、2013年から2015年までの単年のGVA平均値が297億4,900万ペソ(約624億7,290万円、1ペソ=約2.1円)だったのに対して、2016年から2018年までの単年のGVA平均値は274億6,000万ペソと7.7%減少した。

PGLITエキスポ2019の主催者である香港のCPイクジビションのアンドリュー・ケイ社長は、昨今の米中貿易摩擦の影響で多くの中国に立地する縫製企業が移転先を探す中、理由の詳細は明かさなかったが、フィリピンはその候補に入れていないとした。さらにケイ社長は、フィリピン政府は国内の縫製産業を再生させたいのであれば、米国、欧州、日本にミッションを送りこみ、フィリピンの縫製産業をより熱心に広報するべきだとした。

CONWEPは10月、フィリピンの衣料品製造業が米中貿易摩擦による恩恵を受けておらず、むしろ2019年1月から7月までの衣料品の輸出は15%減少したと発表した。CONWEPのマルテス・アゴンシロ会長は「中国への発注が、米中貿易摩擦の影響でフィリピンに来るという予測から、2019年の輸出額は前年比で15%から20%の増加になると予想していたが、実際は15%減少している」と説明した。

フィリピン経済特区庁(PEZA)によると、PEZAが認定する衣料品の輸出型製造業は2019年7月時点で67社あり、うち日本企業は4社だ。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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