カザフスタン鉄道、カスピ海経由の物流活発化に意欲

(カザフスタン、ロシア、CIS、ジョージア)

タシケント発

2019年11月27日

カザフスタン鉄道は、カスピ海経由の物流活性化を進める。同鉄道は、カスピ海東岸にあるカザフスタン最大の港アクタウ港から南に60キロのところに、同港の輸送機能を補完する貨物フェリー専用港湾のクリク港を建設、2017年1月から稼働した。同港は、鉄道貨車、トラック(トレーラー)の積み込みバースを2つずつ有し、過去3年間で輸送貨物取扱実績を増加させている。

クリク港の貨物取扱量は初年度の2017年は147万6,000トンだったが、2018年は161万トンに拡大。2019年1~8月は95万7,000トンで、通年では200万トンとなる見込み。貨物の種類は、2017年は石油製品とその他(鉄道)貨物が半分ずつを占めたが、その後石油製品の扱いが減少し、2019年1~8月には鉄道貨物80万9,000トンと自動車貨物14万8,000トンになっている。クリク港の埠頭(ふとう)にガントリークレーンはなく、コンテナ貨物は取り扱わないので、アクタウ港との機能の重複はない。

クリク港に寄港するフェリーは、2017年は320隻、2018年は547隻、2019年1~8月で392隻と、貨物量と同様に増加傾向だ。鉄道貨物フェリーの輸送能力は車両甲板が1層のものは36台車、2層のものは52台車で、自動車貨物フェリーは1層のものは36台、2層のものは50台。鉄道貨物の品目は日用品、肥料などの化学製品、石炭、食品などだ。自動車貨物では、主として中央アジア市場向けの食品(菓子類)、建材などが輸送され、日系ブランドの自動車も含まれている。トレーラーのナンバーはウクライナ、トルコ、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどで、(欧米との関係が悪化している)ロシアやイランを迂回する貨物トレーラーの輸送路となっている。同港の貨物取扱能力は年間600万トンで、現時点では25~27%程度の稼働率という。

クリク港のタルガット・オスパノフ副社長(開発担当)はジェトロのインタビュー(11月13日)に対し、同港のメリットを「アクタウ港にはない拡張の余地」と説明する。アクタウ市近郊に所在するアクタウ港に比べ、周囲の土地が平たんで余裕があるからだ。現在、外国投資家との間でクリク港の穀物バース建設に関する交渉が進んでいるという。オスパノフ副社長は「設備は新しく、構内の動線も整理されている。到着したトレーラーの審査時間は平均2時間で、運転手はカフェが併設されたターミナルで順番を待つことができる。このターミナルはカザフスタン鉄道が100%所有しているので、(アクタウ港よりも)鉄道貨物の取扱手数料を安くできる」と述べ、中央アジア市場に至る鉄道・自動車物流の拠点としてのクリク港の利点をアピールしている。

写真 クリク港のタルガット・オスパノフ副社長(ジェトロ撮影)

クリク港のタルガット・オスパノフ副社長(ジェトロ撮影)

カザフスタンの首都ヌルスルタンでは、カザフスタン鉄道のパベル・ソコロフ副会長がジェトロのインタビュー(11月14日)に応じ、「大動脈の中国からカザフスタン、ロシア、ベラルーシを経由し欧州へ至る鉄道輸送の整備、プロモーションは十分に成果が出ており、今後、物量は自然に伸びる。カザフスタン鉄道はカスピ海経由の輸送活性化に力を入れる」と述べ、アクタウ、クリク両港の振興、さらには外海への出口となるジョージア(コーカサス)の黒海沿岸の港湾開発動向にも注目していることを明らかにしている。

写真 鉄道貨車用フェリー。アゼルバイジャン向け。日に7隻受け入れることも(ジェトロ撮影)

鉄道貨車用フェリー。アゼルバイジャン向け。日に7隻受け入れることも(ジェトロ撮影)

写真 自動車貨物用の桟橋。一般乗客もフェリーを利用できる(ジェトロ撮影)

自動車貨物用の桟橋。一般乗客もフェリーを利用できる(ジェトロ撮影)

写真 港湾全体の模型。向かって右が海側(ジェトロ撮影)

港湾全体の模型。向かって右が海側(ジェトロ撮影)

写真 大型コイルを載せたトレーラー。通関手続きを待つ(ジェトロ撮影)

大型コイルを載せたトレーラー。通関手続きを待つ(ジェトロ撮影)

写真 クリク港から搬送される日系ブランド車(ジェトロ撮影)

クリク港から搬送される日系ブランド車(ジェトロ撮影)

(高橋淳)

(カザフスタン、ロシア、CIS、ジョージア)

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