米議会民主党、トランプ政権とUSMCAの修正で合意、早ければ来週にも採決か

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2019年12月11日

米民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)は12月10日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の修正について、トランプ政権と合意に達した旨を発表した。同日に米国、カナダ、メキシコ3カ国での署名式も行われ、早ければ来週(12月16日の週)にも米議会での批准法案の採決が行われる見通しだ。

ペロシ議長は記者会見を開き、「今回の貿易協定はNAFTA(北米自由貿易協定)よりも優れたものだが、われわれの取り組みによって、政権から当初提示されたものより飛躍的に改善した」と称賛した。同席したリチャード・ニール下院歳入委員長(民主党、マサチューセッツ州)は今後、議員に対して協定テキスト案を開示する予定と述べ、ペロシ議長は批准見通しについて、年内の会期中に採決したいとコメントした。2019年の議会の会期は12月20日までとされている。

会見で配布された下院歳入委員会の資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、修正合意事項には協定実施、労働、環境、処方薬に関する内容が含まれる。修正合意事項の概要は表のとおり。

表 下院民主党と政権との間の修正合意事項

米国・メキシコ間の協議で米国側が要求していた、鉄鋼とアルミニウムについて域内での鋳造加工を求める原産地規則(2019年12月10日記事参照)は資料には盛り込まれていないが、通商専門誌「インサイドUSトレード」(12月10日)によると、鉄鋼については協定発効から7年後に義務化される見込みだ。他方、アルミニウムに関しては10年かけて3カ国間で交渉し、扱いを定めるもようだ。

労働ルールの修正について、米国労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ会長は「義務を順守しない工場や施設に対して査察を行う手続きを含め、初めて取り締まり可能な労働基準ができる」として、修正を支持するコメントを発表した。処方薬に関わる修正について、製薬団体の米国研究製薬工業協会(PhRMA)は「今回の勝者は米国の知的財産を奪ってただ乗りする外国政府のみ」と反対意見を表明した。チャック・グラスリー上院財政委員長(共和党、アイオワ州)は、修正内容が民主党に譲歩しすぎているという共和党内の声があることを念頭に置きつつ、「議会の可決を妨げるほど大きな問題ではない」と述べている。

民主党の会見が行われた12月10日には、メキシコにおいて修正版USMCAの署名式が行われた(2019年12月11日記事参照)。米国側からはライトハイザー通商代表部(USTR)代表がスピーチを行い、「交渉の結果、歴史上最高の協定となった。域内の労働者、農家に有益で、デジタル貿易および電子商取引はゴールドスタンダードとなる」「協定は初めての真の超党派の合意で、大統領や下院議長、民主・共和党、労働組合、産業界が一体となった奇跡的なもの」と、今回の合意と署名をたたえた。

(藪恭兵)

(米国、カナダ、メキシコ)

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