12月14日から農産物・食品の輸入検査手続きを一部変更

(スペイン)

マドリード発

2019年12月13日

改正されたEUの「飼料・食品関連法ならびに動物の衛生および動物の福祉に関するルールの順守を確実に保証するために実施される公的検査に関する欧州議会・理事会規則2017/625外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」とその関連規則が12月14日から適用開始されることに伴い、スペインでも農産物・食品の通関前の輸入検疫・検査手続きに変更が生じる。

同規則第5章は、第三国からEU域内に入る農産物・食品などの管理について、これまで断片的だった検査制度をまとめて簡素化し、EU全体での情報共有を通じて輸入管理を強化するとともに、事業者向けに検査の効率性と透明性向上を図るもの。

空輸や海陸一貫輸送の輸入検査申請は到着4時間前に短縮

主な変更点としては、通関前の検査窓口が「国境管理所〔(英語)BCP/(スペイン語)PCF〕」に一本化され、動物・植物検疫から有害物質検査、輸入規制管理まで全ての検査がそこで行われる。動物、植物由来など品目によって分かれていた検査申請書類が「共通健康衛生輸入証明〔(英語)CHED/(スペイン語)DSCE〕」に統一。検査申請のタイミングも、従来は1~2日前に要求されていたのが、「貨物到着の24時間前」(食料品の場合)に短縮される。また、マドリードやバルセロナなどの空港、RO-RO船輸送対応の港湾(アルヘシラス、モトリル港など)に到着する貨物は4時間前の申請でよくなる。

検査証明の電子発行対応は数カ月以内に整備の予定

検査は、スペイン保健・消費・社会福祉省の対外衛生局情報システム(SISAEX)を通じて、EUの検査証明書発行システム(TRACES)に電子申請する。TRACES自体も12月14日から「TRACE NT」という新システムに移行するが、対外衛生局によると、電子署名機能の装備に数カ月かかるため、当面は従来どおり印刷する必要がある。SISAEXとTRACESを電子通関システム(VUA)に接続する取り組みも行われているが、輸入検査~通関の完全ペーパーレス化にはまだ時間がかかるという。

輸入検査の時間が短縮されるわけでなし

同規則は検査の頻度も定めている。書類検査は100%実施、現物確認は動物由来品と混合食品については100%実施。サンプル検査は品目別のリスク度に応じて1、5、15、30%の割合で実施となっているが、過去12カ月間の違反数が平均を3割超えた国からの輸入については、検査頻度が最大50%に引き上げられる。また、輸入許可が出なかった貨物の廃棄や返送などの措置に60日の期限が設けられた。

さらに、ほぼ全ての輸入検査対象植物について植物検疫証明書の添付が必要となるほか、混合食品には2021年4月から輸出衛生証明書の添付が求められる。電子商取引でスペインに輸入される商品についても、覆面購入を含めた検査が行われる予定。

対外衛生局の担当者は「今回の手続き変更で、輸入検査の時間が短縮されるわけではない」という。同規則はEU全体で検査基準の一律化を目指すものだが、検査が厳格な国と緩い国はこれからもあり続け、検査官による運用にもばらつきは残るとみている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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