地域交流年への期待相次ぐ、第16回日本ロシア経済合同会議

(ロシア、日本)

モスクワ発

2020年02月26日

第16回日本ロシア経済合同会議(主催:日本経団連、ロシア産業家起業家連盟:RSPP)が2月18日、モスクワで開催された。両国から約250人が参加し、a.日ロ経済協力、b.日ロ協力とロシア経済の近代化、c.日ロ地域交流の新たな機会と展望の3セッションで、各社・機関の取り組みやロシアのビジネス環境の評価などについて議論した。

ロシアのビジネス環境については、日ロ双方の関係者から、世界銀行の「Doing Business」ランキングのロシアの順位上昇を評価する発言が相次いだ。他方、日本側参加者からは、依然として不安定な事業予見性を指摘する声も上がった。

トヨタ自動車ロシアの須賀修二社長は2019年に締結した特別投資契約(SPIC、2019年7月9日記事参照)について、「リサイクル税の100%還付はSPIC締結の前提条件だが、突然、現地調達のレベルに応じて還付率を見直すとの方針が発表された」とし、透明な政策決定や安定的なビジネス環境の維持を図るようロシア政府に訴えた。

ロシア側からは、デジタル分野の各種規制緩和(規制のサンドボックス)が新たな商機を生み出すこと(レシェトニコフ経済発展相)、長期投資に対する保護を強化した投資関連法の整備の進展(アレクサンドル・ショーヒンRSPP会長)を指摘。これに対して日本側からは、2000年に発効した投資協定の改定などを通じた「規制緩和型」の投資政策への転換を求める声が上がった。

2020~2021年に実施される「日露地域・姉妹都市交流年」関連では、双方の参加者から関連する発言が多かった。

ショーヒンRSPP会長は、経団連が会員企業向けに実施したアンケートの結果について、「日本企業のロシアへの関心はウラル以西が中心」と指摘し、大市場である欧州部ロシアでのビジネス展開とともに、極東開発への日本企業の参画を呼び掛けた。

上月豊久・駐ロシア大使は、日本航空と全日空のモスクワ便の羽田乗り入れについて触れ、羽田が拠点になることでロシアから日本の地方へのアクセスがより容易になるとの期待を示した。また「5月に札幌で予定される『日露地域交流年』開会式は日ロ両国の企業、自治体関係者が一堂に会する」として、単なる一過性のものではなく、両国の地方自治体やビジネス関係者にとって魅力的な場にしたいとの考えを示した。

このほか、デジタル経済分野を含む新たな協力可能性についても議論が行われた。日本側は、a.コンセッション方式の官民パートナーシップ・プログラム(PPP)によるインフラ分野への日本企業参入に対する高い期待を示した。都市インフラ整備や環境分野への取り組みはロシア政府が進める国家プロジェクトでも優先分野に挙げられており、日本企業としても新たなビジネスチャンスとして期待が高まる。

写真 多くの参加者を集めて行われた第16回日本ロシア経済合同会議(ジェトロ撮影)

多くの参加者を集めて行われた第16回日本ロシア経済合同会議(ジェトロ撮影)

(梅津哲也)

(ロシア、日本)

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