旧楽天ブラジル買収企業トグ・ブラジル・ホールディングス、再生手続きを申請

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年02月21日

2月12日付の「イーコマースブラジル」紙などによると、旧楽天ブラジルのEC事業を引き継いでいたジェンコム(GenComm)が2月3日、ブラジルの法的再建手続きである裁判上の再生手続き(Recuperacao Judicial)をサンパウロ司法裁判所に申請した。同裁判所は2月7日に承認した。

再生手続き申請によると、負債総額は約4,637万レアル(約11億5,925万円、1レアル=約25円)で、負債の一部にはジェンコムが運営するEマーケットプレースの小売り出店者(1,840社と1,170人の個人が登録)への支払い債務が含まれている。その債務は最低でも約390万レアルとみられている。

2月6日付の「バロール」紙によると、ジェンコムはEマーケットプレース運営と、配送・電子マネーサービスなどを引き継いで収益改善を目指したが、サイト内の大口出店者で中国携帯メーカー小米(シャオミ)の携帯電話を販売する非正規再販業者による受注6割分の未納による負債約550万レアルが新たに発覚し、再生手続きの引き金になったという。ブラジルEコマース協会(ABcomm)は2月7日、被害を受けたとされる会員企業を保護するため、法的な戦略を討議する緊急総会を招集すると発表した。

楽天グループは2011年にEC事業者であるIKEDAを買収し、ブラジルでのEC事業に参入した。ブラジルでは、アルゼンチン発のメルカドリブレをはじめ、地場のB2W、ビアバレージョ、マガジンルイーザなどがEマーケットプレースの業界大手だ。1996年に創立したIKEDAも早くからEマーケットプレースを立ち上げていた老舗だった。

ただ、その後、楽天ブラジルは他社との厳しい競争により、自社ブランドの認知度を十分に上げることができず、事業規模の拡大を図ったものの見合った収益を上げることもできなかった。これにより、Eマーケットプレース運営から、小売業者がEコマース仮想店舗を構築するための電子マネーやロジスティックス、インフラを提供するEコマースサービスに軸足を移したことを2016年に発表していた。

当地報道によると、2019年10月には、テン・オークグループのブラジル法人トグ・ブラジル・ホールディングスが楽天ブラジルを買収し、社名をジェンコムに変更した。テン・オークグループは事業再編を必要とする企業に焦点を当てた米国のプライベートエクイティ投資家グループだ。これによって旧経営陣が去り、従業員も3分の1程度に減少した。なお、オンライン広告事業を行う楽天マーケティングは、引き続き楽天グループ傘下で事業を継続している。また、2月11日付の「インフォマネー」紙によると、楽天グループはブラジルで今後、NFV(ネットワーク機能の仮想化)による第5世代移動通信システム(5G)携帯電話サービスに注力するため、2019年10月に楽天ブラジルを売却している。

(大久保敦)

(ブラジル)

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