マスク不足が継続、小売価格は50倍に急騰するも政府が統制

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月10日

フィリピン貿易産業省(DTI)のラモン・ロペス長官は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて生じているフィリピン国内のマスク不足を解消するため、国内製造ラインの拡大、海外の製造業者との輸入契約の締結、小売価格の統制といったさまざまな施策を講じていると説明した。2月19日付の「マニラ・ブレティン」など地元各紙が報じた。

ロペス長官によると、マスクを製造する国内業者は中部ルソン地方バターン州にあり、1日当たり8万枚の製造設備を保有していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて製造ラインを拡大し、現在は1日当たり20万枚を製造しているという。

ロペス長官はさらに、フィリピン国際貿易公社(PITC)が海外のマスク製造業者と交渉した結果、インドとタイの製造業者と輸入契約が成立したとした。3月4日付の「ファーマスーティカル・テクノロジー」紙によると、インドの製造業者は100万枚をフィリピンに供給する見込みだが、タイの製造業者の供給量は不明という。タイ政府は2月13日、タイ国内でのマスク需要の急増を受け、マスクの輸出許可を当面停止する方針を発表(2020年2月19日記事参照)しており、タイからの輸入が実現するかは不明だ。

マイク・ディフェンザー下院議員は輸入への依存は危険だとし、「現在流行している新型コロナウイルスだけでなく、未知のウイルスが将来発生した際のためにも、国内でのマスクの大量生産態勢を早期に構築する必要がある」として、政府に要望した(「ジーエムエー・ネットワーク」紙2月23日)。

ロペス長官によると、国内のマスク小売価格は1枚25~50ペソ(約50~100円、1ペソ=約2円)だ。一方で、平常時は50枚のマスクのセットを50ペソで販売する小売店も存在していたことから、最大で50倍も価格が急騰していることになる。ロペス長官は小売価格の高騰を抑えるため、DTIが製造業者と小売店を仲介し、卸売価格を1枚当たり8ペソまで下がり、その結果、小売店は現在1枚10ペソまでに抑えているとする。なお、ジェトロが2月中旬にマニラ首都圏でマスクの在庫がある小売店を探したが見つからず、首都圏外で50枚300ペソで販売する小売店を1店舗見つけた。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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