香港の2020年上半期の小売売上高、最大5割減の可能性も

(香港)

香港発

2020年03月09日

香港特別行政区(以下、香港)政府統計処は3月2日、1月の小売売上高(速報値)が前年同月比21.4%減の377億7,400万香港ドル(約5,288億円、1香港ドル=約14円)だったと発表した。香港の小売売上高は通常、1~2月の春節(旧正月)の直前に上昇する傾向にあり、2020年は1月25日(2019年は2月5日)に旧正月の元日を迎えた。しかし、1月の小売売上高は振るわず、2019年2月以降12カ月連続で前年同月比で減少した(図参照)。

図 香港の小売売上高の推移(2019年2月~2020年1月)

業態と品目別にみると、最も落ち込んだのは「宝飾、時計および高級贈答品」で、前年同月比41.6%減の49億1,900万香港ドルだった(表参照)。次いで減少幅が大きかったのは「薬および化粧品」で、32.3%減の37億3,100万香港ドル、続いて「アパレル製品」の28.9%減(36億2,500万ドル)だった。

表 2020年1月の香港の小売売上高(業態・品目別)

反政府デモ・抗議活動による香港の社会混乱や、中国本土での新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)の感染拡大により、全体の約8割を占める中国本土からの旅行客が1月は前年同月比で54.2%減の253万6,768人まで落ち込んだことなどが影響した。一方、香港での新型肺炎の感染拡大により、外出を控えて自宅で調理して食事する市民が増えているため、食料品などを取り扱うスーパーマーケットの売り上げは10.2%増の52億7,700万香港ドルと堅調だった。

香港政府報道官は「新型肝炎の影響により、香港のインバウンド観光業はほぼ停止し、消費などに深刻な影響を及ぼした。小売業のビジネス環境はさらに厳しい状況に追い込まれている」と説明した。また、3月2日付の「サウスチャイナ・モーニングポスト」など複数の香港紙によると、香港小売管理協会の謝邱安儀主席は「2020年上半期の小売売上高は、前年同期比で30~50%減少すると見込んでいる」とコメントし、統計開始以来、最大の減少幅となる可能性を示唆した。香港政府は、経済や雇用市場全体の状況とその影響について注意深く監視していくとしている。

(吉田和仁)

(香港)

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