エジプト政府、新型コロナウイルスの経済対策実施、債務は増加か

(エジプト)

カイロ発

2020年04月07日

エジプトの新型コロナウイルス感染者は4月5日時点で1,070人と拡大が続いており、政府は感染拡大防止策として、国際線運航の原則停止、行政サービスの原則停止、夜間外出禁止令など施策を公表している(2020年3月26日記事参照)。また、政治経済のスケジュールも延期を決めている。

現時点で明らかになっている延期情報は以下のとおり。

  • 3月に予定されていたエジプト最大規模のカイロ国際見本市を6月以降へ延期(中止も検討)
  • 6月に予定されていた新行政首都への移転を2021年へ延期
  • 10月に予定されていた大エジプト博物館(GEM)開館を2021年へ延期
  • 公的セクターのIPO(株式上場)プログラムを延期

こうした措置や、国際線停止や観光地・飲食業の閉鎖により、今後数カ月にわたり観光業・サービス業に甚大な損失を与える可能性が高く、経済と雇用に大きな影響を及ぼすとみられる。在宅勤務や交代勤務の要請があり、製造業は工場を閉鎖する企業が増加している。計画・経済開発省は2019/2020年度のGDP成長率予測を5.6%から5.1%へ下方修正した。今後、経済へさらなる影響が予想されるため、政府は以下のとおり経済対策を進めている。

【政府・公的機関による主な経済関連対策・措置(4月5日時点)】

  • コロナ関連対策として1,000億エジプト・ポンド(約7,000億円、EGP、1EGP=約7円)の予算措置を大統領が公表
  • 3月16日、政策金利3%引き下げなど、中央銀行が金融施策実施(2020年3月26日記事参照
  • 3月17日、輸出業者に対して10億EGPの支援策の拠出を公表
  • 3月29日、中央銀行は一時的に現金引き出し限度額を設定(1日当たり個人1万EGP、企業5万EGP、ATMで1日当たり5,000EGPの引き出しが上限)
  • 4月2日、通信・情報技術省の要請でテレコム・エジプトが在宅勤務・オンライン教育用に通信料支援を公表
  • 4月5日、エジプト産業連盟・情報通信会議所が在宅勤務のためのIT活用ヘルプデスクを設置
  • 観光分野への500億EGPの支援、医療研修生への約3億EGPの支援
  • 産業用ガスおよび電気料金の値下げ措置、電気料金の電子決済支援措置
  • 6カ月分の食料・医療品確保を公表、国内での供給を目的に豆類の一部を輸出禁止
  • 滞在ビザ、労働許可、運転免許、車両登録の更新、個人所得税、農業用地税の納税など公的申請期限の猶予
  • 政府による非正規雇用の貧困家庭への500EGP支給(現地報道による)

支援策の実施のため、エジプト政府は世界銀行との790万ドルの融資のほか、国際機関とも支援策の協議を進めている。既に「アラブの春」以降の経済対策の支援として、IMFへの120億ドルの長期ローンの返済が必要となっており、今回の経済対策は一定の効果は見込めるものの、政府の債務がさらに増加する可能性がある。IMFの融資の条件の1つだった公的セクターの株式上場は前述のとおり延期になった。また、日本政府と国際協力機構(JICA)の支援による大エジプト博物館の開館も延期となった。4月5日のエジプト政府と国際援助機関、各国援助団体の会合で、欧州復興銀行はエジプトの民間企業や銀行に対して新型コロナ支援融資策があると述べている。

(井澤壌士)

(エジプト)

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