香港の改正商標条例が成立、国際商標登録制度の導入に向けて前進

(香港)

香港発

2020年06月24日

香港政府は6月19日、「2020年商標(改正)条例」を成立させ、官報に掲載した。今回の改正では、香港において「標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書」(以下、マドリッド議定書)を適用する内容が盛り込まれた点が注目される。

マドリッド議定書に基づく国際商標登録制度とは、世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局に国際登録をすることによって、加盟国においては異なる手続きや言語を経由しなくともそれぞれの国で保護を求めることができる制度だ。日本や中国をはじめ100カ国以上が加盟しているが、一国二制度の下で中国本土とは異なる商標制度を有する香港には適用されていなかった。この適用により、香港の出願人が香港の登録商標を基礎として海外で商標を取得しやすくなるだけでなく、日本など海外の出願人にとっても香港での商標登録が容易になる。

なお、2018年の香港における海外(中国含む)からの商標出願件数は約2万5,000件(総数は約4万件)、うち日本からの出願件数は約3,000件で、日本からの出願先として香港は中国、米国、韓国、タイに次ぐ5位でEUを上回っている。また、改正条例には、マドリッド議定書に関する内容のほか、香港税関当局に商標条例に基づく刑事執行権限を付与する内容なども盛り込まれている。

改正条例は、マドリッド議定書に係る箇所を除き、6月19日から施行されている。マドリッド議定書に係る箇所については、詳細な手続きを定める規則や情報システム整備などの準備作業が完了し、中国の中央政府による了解が得られた後に施行される。香港政府によれば、早ければ2022年~2023年ごろに施行との見込みが示されている。

香港政府の商務・経済発展局の報道官は、「香港におけるマドリッド議定書の適用は、当地の知的財産制度を強化するための主要な施策の1つだ。これにより、企業は、複数の法的管轄地域で商標保護を求めそれらの商標登録を管理する時間とコストを節約できるだけでなく、ビジネスや知的財産取引を行う理想的な場所としてのわれわれの立場を強化することもできる」と表明している。

この改正は、2014年から検討が進められてきたものであり、2019年に草案が公示され、立法会(国会に相当)での審議を経て、2020年6月10日の本会議において可決した。なお、2020年5月、新型コロナウイルスの影響により立法会の審議が滞る中で林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官から、審議中の複数の条例案のうち国歌条例と商標(改正)条例の2条例の審議を優先する方針が示されていた。

(松本要)

(香港)

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