感染拡大で再度外出規制、経済危機で信用格付は最低水準に

(レバノン、エジプト)

カイロ発

2020年08月07日

レバノンは7月30日から新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2度目の外出規制強化(ロックダウン)を行っている。3月より夜間外出禁止、国際線停止などの措置を実施したが(2020年4月2日記事参照)、5月より経済活動を段階的に再開した(2020年5月1日記事参照)。6月までは緩やかな感染拡大に抑え込んだものの、7月以降は感染が拡大傾向にある。7月1日より1日あたり2,000人までの入国制限で国際線を再開していた。8月3日の1日当たり新規感染者は177人で、累計感染者は5,062人、死亡者は65人となった。

各種施設の閉鎖やロックダウンは8月10日までで、詳細は在レバノン日本大使館ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。3月15日から発動されている総動員令(感染拡大防止措置)は8月30日まで延長された。総動員令の期間中は、マスク着用、密集回避、社会的距離確保など感染予防の順守が求められ、7月より罰則が強化された。予防意識欠如などにより感染を拡大させた者は最大6カ月の禁錮、また、自身の感染を自覚した上で感染を拡大させた者は1~3年の禁錮が科される。隔離措置への違反には60万~500万レバノン・ポンド(約4万~約35万円、1レバノン・ポンド=約0.07円)、公共の場所でのマスク着用義務への違反には5万レバノン・ポンドの罰金を科すなど、感染防止策を強化する。

通貨下落で消費者物価90%上昇、経済回復のめど立たず

レバノンは3月に実質上の債務不履行となっており(2020年5月8日記事参照)、IMFなどに金融支援を求めているが、政治の混乱もあり交渉が難航し、財政再建の見通しが立たない。8月3日にはナシーフ・ヒッティ外務・移民相が政府の対応に抗議する声明を出して辞任し、チャーベル・ウェーべ氏が後任に指名されたものの、経済対策をめぐる政府内での対立がうかがえる。

信用格付け会社ムーディーズは7月27日、レバノン政府の発行体格付けを「Ca」から、ベネズエラと並ぶ最低水準の「C」に引き下げた。同社によると、経済・財政危機により為替の並行レートは約80%下落しており、輸入に頼る食品や生活用品は値上げされ、6月の対前年同月比の物価上昇率は90%と大幅な上昇を見せた。外貨準備高も減少しており、債務返済や輸入への外貨割り当てが懸念される。IMFは4月時点で2020年の経済成長率をマイナス12%と予測する(2020年5月8日記事参照)。8月4日に数千人の死傷者が出る爆発がベイルート港湾で発生、2019年秋から続く政府への抗議デモによる治安悪化、イスラム教シーア派民兵組織でレバノン公認政党としても活動するヒズボッラーとイスラエルの緊張など、社会の混乱が経済をさらに減速させないか懸念される。

(井澤壌士)

(レバノン、エジプト)

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