欧州委、「単一欧州空域」の改正法案を公表

(EU)

欧州ロシアCIS課

2020年10月01日

欧州委員会は9月22日、「単一欧州空域」(SES:Single European Sky)(注)の規制枠組みに関する改正法案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同改正法案は欧州グリーン・ディールの取り組みと対応しており、欧州の空域の管理を近代化し、より持続可能で効率的な飛行経路を構築することで、航空輸送による二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目的とする。新型コロナウイルス感染拡大の影響によって航空交通が著しく減少している中、航空交通の需給管理を改善し、航空交通管理のレジリエンス(より強い回復力)を高めることがより一層必要な状況となっていることを踏まえた提案となっている。

欧州の航空業界のグリーン化とデジタル化を後押し

欧州委のアディナ・バレアン委員(運輸担当)は「現在、飛行機は異なる空域のブロック間をジグザグに飛行することがあり、遅延と燃料消費の増加の要因となっている。より効率的な航空交通管理システムは直行路線を増やし、より少ない燃料消費を意味し、航空会社のCO2排出量とコストの削減につながる。今回の『単一欧州空域』の改正法案は排出量削減に向けた支援だけでなく、データサービス市場を開放することにより、航空セクターのデジタルイノベーションを刺激する」と述べ、同改正法案が航空セクターのグリーン化とデジタル化の両方を推し進めるものだとした。

欧州委は、安全で費用効果の高い航空交通管理サービスを実現するために、主に次の行動を提案している。

  • 欧州のネットワークとその管理を強化し、混雑や最適でない飛行経路を回避する。
  • より良い航空交通管理のために必要となる欧州のデータサービス市場の開放を促進する。
  • EU加盟国に代わって、航空交通サービスにおける経済的規制を合理化し、持続可能性とレジリエンスを高める。
  • 革新的なソリューションの定義、開発、展開のための協調を後押しする。

同改正法案は今後、EU理事会(閣僚会議)と欧州議会で審議される予定。

(注)SESは、欧州の空域の断片化を減らし、安全性、容量、費用対効果、環境の観点から、欧州全体に統一した航空交通管理システムを構築するために2004年に開始した。2013年に欧州委は改正案(SES2+)を提出したが、2015年以降、EU理事会(閣僚会議)で交渉が停滞していた。今回、欧州委は2013年の改正案のテキストを修正し、新しい措置を追加した改正案と欧州航空安全機関(EASA)基本規則の改正案を公表した。

(土屋朋美)

(EU)

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