ロシア進出日系企業実態調査、営業黒字見込み割合は過半を維持

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年12月24日

ジェトロは12月21日、2020年度ロシア進出日系企業実態調査の結果を発表した。2020年の営業利益見通しについて、「黒字」を見込む企業の割合は55.9%で、新型コロナウイルス禍の影響を受け、前年に比べ12.4ポイント減となったが、世界の主要国と比較すると、「黒字」割合は韓国(71.8%)、中国(63.5%)に次いで3番目に大きかった。

「黒字」割合が過半を維持した背景には、新型コロナ禍と油価下落による通貨ルーブル安が発生したものの、各社ともに黒字を維持するための工夫(販売価格の引き上げや契約通貨の外貨建てへの変更など)や経営努力(営業努力やコスト削減など)が奏功していることが挙げられる。

今後1~2年の事業展開に関する見方については、「拡大」と回答した企業は前年比15.1ポイント減の29.0%にとどまった。主要国と比較すると、この割合は英国、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)に次いで小さい。「現状維持」と「縮小」はそれぞれ59.1%、10.8%と、ともに過去最大を記録した、新型コロナ禍を踏まえて慎重に状況判断をする姿勢がうかがえる。「経済の変動幅が大きいため、投資回収と事業計画の変更を余儀なくされることが多過ぎる」(輸送機器部品製造)といったコメントがみられた。

今回の調査では、新型コロナ禍によるビジネスへの影響についても聞いた。ビジネス活動が正常化する時期の見込みについて、7割近い企業が「2021年内」と回答し、「2020年内」とする企業は1割程度にとどまった。ビジネス環境正常化後の需要環境については、半数を超える企業が「新型コロナ前の状況に戻る」とみている。

新型コロナウイルス感染の影響を受けて、63.4%の企業が「事業戦略の見直しを行った(あるいは行う予定がある)」と回答した。この割合は世界の主要国の中で最も大きい。見直し内容については、「在宅勤務やテレワークの活用拡大」(79.7%)、「デジタルマーケティング、人工知能(AI)利用などデジタル化の推進」(42.4%)などが挙がった。特に「AI利用などデジタル化の推進」の割合は世界の主要国の中で3番目に大きかった。

今回の調査は2020年9月に実施。ロシアに現地法人(日本からの直接投資または間接出資比率が10%以上)や支店の形態で拠点を構えている企業120社に送付し、93社(製造業24社、非製造業69社)から回答を得た。調査は2013年度から毎年実施しており、今回で8回目。調査結果の詳細はジェトロ・ウェブサイトPDFファイル(2.6MB)に掲載されている。

(宮下恵輔)

(ロシア)

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