基本給は上昇するも、デジタル対応などに課題、2020年度カナダ日系企業実態調査

(カナダ)

米州課

2020年12月25日

ジェトロが12月22日に発表した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」(2020年12月22日記事参照)では、前年調査と同様、在カナダ日系企業の賃金額を聞いた。調査結果によると、2020年の職種別基本給(月額、各職種の中央値)は、工場ではオペレーター(製造工程における機械の操作に従事する職種)が4,000カナダ・ドル(約32万4,000円、Cドル、1Cドル=約81円)、メカニカル・エンジニア(機械および設備の設計・製作・管理などを行う技術職)が5,550Cドル、プロダクション・マネジャー(生産管理部門の課長クラス)が7,500Cドルだった。事務職では、ジェネラル・クラーク(一般事務職)が4,119Cドル、ジェネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフ(総務部門の課長クラス)は6,700Cドルで、オペレーターを除く全ての職種で前年を上回った(添付資料図1参照)。他方、2020年度の全職種平均の昇給率(中央値)は2.0%と前年(2.5%)から0.5ポイント低下し、2021年度の昇給率も2.0%が見込まれている。

年間実負担額(注)の中央値は、オペレーターが5万1,025Cドルと前年から増加したが、メカニカル・エンジニアは7万Cドル、プロダクション・マネージャーは9万Cドルといずれも減少した。事務職は、ジェネラル・クラークが5万6,850Cドル、ジェネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフは9万3,400Cドルだった。

コロナ禍でも雇用を維持

同調査では、日本からの派遣者(駐在員)数および現地従業員数の変化も聞いた。過去1年の駐在員数の変化は「横ばい」と回答した企業が77.1%を占め、「減少」と回答した企業は15.3%に達した(添付資料図2参照)。業種別でみると、鉄・非鉄・金属は駐在員数の「増加」「横ばい」「減少」ともに33.3%となった。今後の予定についても、「横ばい」の割合が全業種で77.3%を占め、「新型コロナウイルス禍」においても駐在員を維持する傾向がみられた。

現地従業員数については、過去1年の変化で「増加」と回答した企業は20.7%と前年(28.8%)より8.1ポイント減少したが、「横ばい」は55.2%で、「新型コロナ禍」でも過半以上の企業が雇用を維持した(添付資料図3参照)。ジェトロが2020年9月に行った新型コロナウイルス対策に関わる緊急・クイックアンケートPDFファイル(2.4MB)によると、回答企業の約6割がカナダ連邦政府の緊急賃金助成制度(CEWS)を活用していた。

こうした中、今回の調査で経営上の課題を聞いたところ、取引先からの発注量の減少(44.1%)や新規顧客開拓(41.3%)など営業面での課題に続いて、雇用面では「従業員の質」(29.4%)や「従業員の賃金上昇」(25.2%)を課題として挙げる企業が目立った。具体的には、雇用年数の長期化によるデジタル対応力の低下や、オンタリオ州とブリティッシュ・コロンビア州で最低賃金が上昇したことなどが聞かれた。これら課題への対応策として、組織の改編やIT化による業務効率化、従業員削減に加え、今期の昇給を見送る企業もみられた。

(注)1人当たり社員に対する負担総額(基本給、諸手当、社会保障、賞与、残業代などの年間合計、退職金は除く)、2020年度見込み。

(大塚真子)

(カナダ)

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