米USTR、ミャンマーとの貿易投資枠組み協定を停止、GSP非適用も視野に

(米国、ミャンマー)

ニューヨーク発

2021年03月30日

米国通商代表部(USTR)は3月29日、2013年にミャンマーと締結した貿易投資枠組み協定(TIFA)に基づく同国への通商面での関与を停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。さらに、米国議会が再発効を議論している一般特恵関税制度(GSP)に関して、ミャンマーを対象外とすることも示唆している。

キャサリン・タイUSTR代表は、ミャンマーの治安部隊が市民への暴力を続けている点を指摘した上で「米国は、ミャンマーの人々が経済成長と改革の基盤である民主的に選ばれた政府を取り戻そうとする努力を支える」との声明を出している。TIFAに基づくミャンマーへの関与の停止は、民主政府が戻るまで継続するとしている。USTRによると、両国は2013年にTIFAを締結し、貿易・投資に関する課題につき協議・協力するプラットフォームを創設した。その中で、ミャンマーは経済改革、包摂的な開発、世界の貿易制度への統合について米国と協力していくことに合意していた。

ミャンマーをGSP対象外とする可能性も

TIFAに基づく両国間の協議内容には、世界労働機関(ILO)で規定された基本的な労働権の尊重、促進、実現も含まれていた。2016年にはミャンマーが労働者の権利保護のさらなる強化を約束した外交文書も交換しており、そうした進展を受けて米国は、1989年以降停止していたミャンマーのGSP対象国としての地位を2016年11月に復活させている。しかしUSTRは、ミャンマー国軍が今回のクーデター発生以降に、民主化運動を率いる国内の労働組合や労働者を弾圧のターゲットにしていることを深刻な懸念と指摘。米議会がGSPの再発効を検討する中で、ミャンマーにおける労働権の保護状況を考慮するとしている(注)。

GSPは2020年末で失効しており、米議会では再発効に向けた議論が行われている。しかし、民主党はGSP対象国の適格性を判断する上で、既存の要件に加えて人権尊重や環境保護の状況も追加するよう求めていることから、共和党との議論がまとまっておらず、法案提出可能な状況には至っていない(2020年12月25日記事参照)。

(注)大統領は、開発途上国がGSP対象国として適格かを判断する際の1つの基準として、その国の労働者に対して、国際的に認められた労働者の権利を与える措置を行ったか、または行っているかを考慮することになっている〔19 USC 2462 (b),(C)〕。

(磯部真一)

(米国、ミャンマー)

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