通信省、5G入札に向けて訪米、政府や企業と会合

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2021年06月25日

ブラジル通信省は6月10日付プレスリリースで、ファビオ・ファリア通信相を代表としたミッション団が同月7~10日に米国を訪問(注1)し、米政府関係者らと第5世代移動通信システム(5G)入札に向けた情報収集や意見交換などを行ったと発表した。

2021年中に予定されるブラジルの5G入札は、高い安全性を保持するプライベートネットワーク構築を念頭に置いている。8日付の通信省プレスリリースによると、今回の訪問では、米国のプライベート5G技術の理解を深め、安全な利用方法を学び、同技術に関連する民間企業と会合を開催することなどを目的としていた。

7日は国務省や国家安全保障会議(NSC)を訪問し、サイバー攻撃のリスクや5G関連機器の製造サプライチェーンについて議論した。7日付通信省のプレスリリースによると、国土安全保障省とは、主に5G通信網供給事業者の市場育成につながるオープンネットワークのオープン・ラン(Open RAN)とスタンドアローン方式(注2)の相違点を議論したという。また、通信省は、ブラジル政府が求めるプライベートネットワークは、仕組みが複雑かつ高い安全性を保持したものを要求することにも言及した。

プライベートネットワーク構築に必要な技術やハードウエアを持つ民間企業と8日に会合した。通信省の8日付プレスリリースによると、同会合には、5G技術を支える携帯電話用のチップなどを製造するクアルコム、プライベートネットワークの経験が国際的に豊かなモトローラ、ブラジルで既にデータセンターやクラウドコンピューティングを展開しているIBMが参加した。

9日は米州開発銀行(IDB)のマウリシオ・クラベルカローネ総裁と会合を行った。ファリア通信相は北部アマゾン地域でインターネット通信速度が遅い問題を取り上げ、この問題の対象となる920万人以上に高度なインターネット接続を提供することを重要視した。通信省の9日付プレスリリースによると、インターネット接続速度の問題解決に向け、IDBから10億ドルの融資が約束されたという。アマゾン地域向けの融資としてIDBから10億ドルの拠出が既に決まっていたため、合計20億ドルが拠出される見込みとなる。

エリクソンや米国通信大手AT&Tとは最終日の10日に会合し、各社が関わっている米国のプライベートネットワークの事例についての理解を深めた。

ブラジル政府は2021年2月25日に5G入札を通知するとしている。ただ、実際に入札を実施するためには連邦会計検査院(TCU)の審査が必要となっており、時間を要している。

(注1)滞在日程は、6月7、8、9日がワシントン、10日がニューヨーク。

(注2)4G基地局と5G基地局を連携させて動作させるノンスタンドアローン方式に対し、独立した5Gコアネットワークにより5G基地局を単独で動作させる方式。

(古木勇生)

(ブラジル、米国)

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