デジタル課税、7月1日から徴収開始

(スペイン)

マドリード発

2021年06月29日

スペイン政府は7月1日から「デジタルサービス税法」に基づき、デジタル課税の徴収を開始する。それに伴い、同法に関連する施行細則を6月10日と12日に施行した。

スペインのデジタル課税は、オンライン上の広告や仲介、ユーザーによって生成されたデータの販売といった特定のデジタルサービスの提供に課税する間接税だ。全世界での前年の年間売上高が7億5,000万ユーロ以上、かつスペイン国内での課税対象デジタルサービスの年間収入が300万ユーロ以上の企業に対し、対象事業収入の3%を四半期ごとに課税する。政府は「この閾値(いきち)により課税対象を大企業のみに絞り、中小企業に影響が及ばないようにした」と説明している。

国内のデジタルサービスは、ユーザーの通信機器の位置情報(IPアドレスなど)で識別される。納税企業はユーザー所在地記録や、国内事業収入の算定根拠などの文書を作成し、税務当局からの要請に応じて提出しなければならない。こうした義務に違反した場合の罰金は、対象年間収入の0.5%(最低15万~最高40万ユーロ)と定めている。

G7声明、報復関税延期のタイミングで徴税開始

「デジタルサービス税法」自体は2021年1月から施行されており、7月の初回徴収で2021年前半の2四半期分が徴収され、年間968億ユーロの税収が見込まれる。デジタル課税はEUの復興基金の資金返済のための財源の1つで、実施が不可欠という事情がある。

今回の徴収開始は、6月上旬のG7財務相会合(2021年6月7日記事参照)でデジタル課税に関する国際合意に向けて前進した直後となったが、政府はこれまでもデジタル課税をめぐる国際ルールが合意されるまでの一時的な課税との立場を明確にしている。6月2日には米国通商代表部(USTR)がスペインを含む6カ国のデジタル課税に対する報復関税発動を180日間停止すると発表しており、政府は「OECDでの合意プロセスは順調に進んでおり、報復関税は最終的に発動されないと確信している」として、国際的な枠組みへの合意ができ次第、それに基づく税制に速やかに移行することを前提に、徴税に踏み切ったかたちだ。

グーグルやアマゾンなどの巨大IT企業も加盟するスペインのデジタル企業団体ADIGITALは、このタイミングでの徴税開始に反対し、「国際合意が成立するまでは課税は中止すべき」と主張している。アマゾンは4月から出店料を3%引き上げ、グーグルは5月から広告料に2%の手数料を上乗せするなど、利用者への一部転嫁を図っている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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