AIの経験値が魅力、カナダエコシステム紹介ウェビナー

(カナダ)

トロント発

2021年06月17日

ジェトロは6月10日、ウェビナー「オープンイノベーション塾(注1)」を開催した。4回目の開催となる今回は、カナダのスタートアップ・エコシステム(以下、エコシステム)をテーマに、現地でビジネスを行う日系企業関係者らが、カナダのエコシステムの特徴や現地スタートアップとの協業の「コツ」などを紹介した。

ウェビナー前半では、ジェトロ・トロント事務所の江崎江里子次長が、トロントやモントリオールなどカナダ各地に広がるエコシステムに関して、産業やスタートアップの集積、企業へのアプローチ方法などを解説した(注2)。

ウェビナー後半では、コンサルタント、商社、ベンチャーキャピタル、政府機関からパネリストを招き、それぞれの視点から、カナダのスタートアップやビジネス環境の特徴を議論するとともに、現地企業との協業の成功例と失敗例、その背後にある要因などを共有した。

パネルセッションの冒頭、米国やカナダの人工知能(AI)分野のスタートアップに投資を行うハイクベンチャーズのジェネラルパートナーである安田幹広氏は、カナダのスタートアップの特徴を「AI関連の人材が豊富で企業数も多い。AIの活用に長い間取り組み、AI技術を用いて実際に解決してきた課題は多様。そのため、自社の課題解決に資する技術を持つスタートアップをトロントやモントリオールでは見つけやすい」と指摘した。

日本企業のカナダ進出支援を行うノウジックテクノロジーのファウンダー兼チーフコンサルタントの山口哲氏は、カナダ各地で有効に機能するエコシステムの例としてウォータールー地域を挙げ、「産学連携がうまくいっている。研究の中心であるウォータールー大学では、知財権を研究者に帰属させ、新しい技術やアイデアの事業化を促している。コミュニテックという地域のイノベーションハブが、スタートアップへの助言や支援、大手企業とのマッチングによる共創環境の創出を行っている」と紹介した。

カナダ三菱商事企画業務部長のヴァイタス麻子氏は、スタートアップとの協業の成功の秘訣(ひけつ)について、「スタートアップに何を求めているのかを最初に明確に伝えること。そして、スタートアップをベンダー(販売会社)ではなく立場が同等のパートナーとして捉え、プロジェクトに取り組むことが重要」と指摘した。

在日カナダ大使館上席投資担当の徳永陵氏は、「日本企業がカナダのスタートアップと協業すると、その人材の質とコストのバランスの良さに気付き、そこからさらに大学との研究開発(R&D)につなげようとする傾向がみられる」とする。また、同氏は「カナダは自国市場が小さいがゆえに大企業が少なく、民間のR&D予算の規模が大きくならないという課題がある。そのため、政府は海外企業がカナダの企業や大学とR&Dを行うことを後押しする支援を行っている」とアピールした。

ジェトロは6月1日から、海外企業とのオープンイノベーション活動をサポートするサービス(注3)を、カナダでも新たに開始した。海外との協業・連携に資する、現地エコシステムの情報などを調べる際に活用が可能となっている。

写真 パネルセッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルセッションの様子(ジェトロ撮影)

(注1)オープンイノベーション塾は、海外のエコシステムの最新情報やスタートアップとのグローバルな協業をする際の「コツ」について情報提供するセミナー・ウェビナーシリーズ。

(注2)カナダのエコシステムについては、ジェトロが6月1日に公開したレポート「いまこそ活用すべきカナダのイノベーションエコシステム」で紹介。

(注3)ジェトロは既に、シリコンバレー(米国)、ロンドン(英国)、ヘルシンキ(フィンランド)、ベルリン、デュッセルドルフ、ミュンヘン(ドイツ)、パリ(フランス)、深セン(中国)の8拠点でサービスを展開しており、6月1日から新拠点としてトロント(カナダ)、サンパウロ(ブラジル)を追加した。

(江崎江里子)

(カナダ)

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