アルゼンチン・ブラジル海上輸送協定終了で海上輸送コスト低下の可能性も

(アルゼンチン、ブラジル)

ブエノスアイレス発

2021年07月21日

2022年2月6日以降、アルゼンチン・ブラジル間の海上輸送コストが低下する可能性が出てきた。

アルゼンチンとブラジルの両国は、両国間で取引される貨物の海上輸送をアルゼンチン、ブラジル船籍の船舶のみに限定する「海上輸送協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を1985年に締結したが、協定は2022年2月5日に終了する見通し。海上輸送協定の有効期間は2年間で、いずれか一方の国が協定の終了を申し入れなければ自動延長される仕組みだが、在アルゼンチン・ブラジル大使館は2021年2月3日付でアルゼンチン外務省に対し、協定を更新しない旨を申し入れた。これにより、アルゼンチン南端のウシュアイアからブラジル北東部のレシフェ間の沿岸輸送への新規参入が促され、海上輸送コストの低下が見込まれる。

2021年3月3日付の現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)によると、2国間の海上輸送にはアルゼンチン13社、ブラジル10社の船主が参入しており、年間500万トンの貨物を輸送している。ここに便宜置籍船を含む第三国船籍の船舶が投入されることにより、輸送コストが25~30%低下する可能性がある。船主などで構成する両国の業界団体は、今回のブラジルの申し入れに不満の声を上げている。

なぜブラジルは、アルゼンチンとの海上輸送協定を終了させるのか。4月5日付のアルゼンチンのネットメディア「トレードニュース」は、ブラジル政府関係者がブラジルの業界関係者に説明した理由として、「OECDへの加盟を目指すブラジルが、OECD加盟国には適用されない特別な条件を維持することはできない」旨を挙げている。また、ブラジルにおける業界関係者の言葉として「ブラジル経済省が経済の自由化を目指し、開放的な経済政策に向けた圧力もある」と伝えている。

メルコスール域内の海上輸送(国内輸送と自動車輸送を除く)は、EU・メルコスール間の自由貿易協定(FTA)の発効(注)から10年以内に自由化することでEUと合意していたが、今回のブラジルの決定により、アルゼンチン、ブラジル両国の船主は同自由貿易協定の発効を待つことなく対応を迫られることになった。

(注)EU・メルコスール間の自由貿易協定は2019年6月に政治合意に至ったが、現時点で署名はまだ行われていない。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル)

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