日系VCのケップル、エジプトのスタートアップに出資

(エジプト)

カイロ発

2021年07月29日

エジプトでは、「新型コロナウイルス禍」で経済などのデジタル化が進んでおり、事業立ち上げ初期の情報通信技術(ICT)スタートアップ向けのシード、プレシード出資が相次いでいる(2021年6月18日記事参照)。

2021年7月、アフリカにおいて現地スタートアップの成長をサポートする日系ベンチャーキャピタル(VC)のケップル・アフリカ・ベンチャーズ(Kepple Africa Ventures)が、2020年に創業されたエジプトのスタートアップのミンリー(Minly)に対し、合計360万ドルのシードラウンド出資に参画したことを発表した。

ミンリーのプラットフォームでは、テレビや映画のスター、SNSのインフルエンサー、ミュージシャン、アスリートなどの有名人から、購入者やその家族、友人に向けてパーソナライズされたビデオメッセージ、ボイスメモ、チャットを購入できる。世界的に類似サービスが提供されているが、ミンリーは主にエジプトや中東・北アフリカ地域(MENA)のアラビア語圏を中心に展開しており、数百人の有名人と、5万人のユーザーが登録されている。今回の出資を受け、コンテンツクリエーターからのコンテンツ購入など、さらなるサービス拡大を進める。

今回の出資について、ケップルのゼネラルパートナーを務める品田諭志氏は、7月15日にジェトロが行ったインタビューで、「エジプトはMENAのいわばハリウッド的存在だ。エジプト映画は湾岸諸国でも大人気で、エジプトの俳優やタレントは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)にも熱狂的なファンがいる。ミンリーはエジプトを拠点としながらも、パッションエコノミー(注)が大きく成長しているMENA全体をターゲットとしており、各国の経済レベルに合わせて価格設定も変えている」と語った。さらに、エジプト市場の魅力について、「高い人口密度、3,000ドルを超える1人当たりGDP、物流インフラの存在、といった、B2Cの成長に必要な条件がそろっている」とした。また、ミンリーの創業者は、ソニー・ピクチャーズで働いたのち、アップルTVやネットフリックスMENAの立ち上げを行った人物だ。日本の大ファンでもあるため、今後の日本企業との連携にも意欲的だという。

(注)特定の分野で情熱を持った個人が、ファンと直接的に関係を構築し、自身の個性やスキルへの対価を得られる経済のこと。

(井澤壌士)

(エジプト)

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