中国のガンフェン・リチウムがサルタ州のリチウム開発に6億ドルを投資

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年07月20日

アルゼンチン北西部に位置し、チリと国境を接するサルタ州の政府は6月16日、中国のガンフェン・リチウム(贛鋒鋰業)が、アルゼンチン子会社のリティオ・ミネラ・アルヘンティーナを通じて、同州におけるリチウム開発プロジェクトに6億ドルを投じると発表した。

投資は、同州に位置するユーヤイヤコ塩湖でのリチウム塩水処理プラントの建設と、同州グエメス市のヘネラル・グエメス工業団地での炭酸リチウムプラントの建設に充てられる。本プロジェクトによる直接雇用は1,300人、間接雇用は3,000人、生産量は年間2万トンとしている。

また、7月6日には、同社がヘネラル・グエメス工業団地の23ヘクタールの用地を取得した、とサルタ州政府が発表した。投資額は3,400万ドルで、5年後の生産開始を予定しているという。

ガンフェン・リチウムは2021年5月にも、工業生産・開発省、フフイ州との間でリチウム電池の工場建設に向けた覚書を締結した。同社は、カナダのリチウム・アメリカス・コープと合弁で、フフイ州のカウチャリ・オラロス塩湖のリチウム開発プロジェクトを手掛けており、同プロジェクトへの投資額は6億4,100万ドル、マインライフ(注)は40年、生産量は年間4万トン。2022年の生産開始を目指している。

アルゼンチン北西部のフフイ州、カタマルカ州、サルタ州は、チリおよびボリビアと共に「リチウムトライアングル」を構成する。米国地質調査所(USGS)によると、アルゼンチンは世界4位のリチウム埋蔵量を有しており、外国企業はアルゼンチンのリチウム開発プロジェクトに多額の投資をしている。

一方、2021年6月10日に、現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)は、「リチウムを国家戦略物資に指定してリチウムの採掘、生産、精製を国家の管理下に置こう」というイニシアチブが与党内にあると報じ、州政府関係者や投資家は不安を抱いている。

7月8日には、科学技術・イノベーション省傘下の国家科学技術研究会議(CONICET)、国有の石油会社YPF傘下のY-TECなど政府関係機関が、リチウム電池の生産工場の建設に向けた覚書に署名した。持続可能なモビリティのカギの1つであるリチウムを重視する現政権の姿勢がうかがえる。

(注)鉱山において、資源が枯渇するまでの操業期間のこと。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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