アフガニスタン情勢めぐり、難民流入を懸念

(トルコ、アフガニスタン、米国、中東)

イスタンブール発

2021年08月19日

トルコのメブリュト・チャウシュオール外相は8月17日、アフガニスタン情勢への対応に関し、タリバンを含めた全ての当事者と対話しているとし、トルコ政府は同国の平和と安定を望むと述べた。

トルコは6月のNATOサミットで、米軍撤退後のカブール国際空港の警備・運営をトルコ軍が引き継ぐことで米国と合意しており、現在も約500人規模のトルコ軍兵士がカブールに駐留している。このため、トルコは、NATO軍の一員として米軍との調整だけでなく、タリバンとの交渉をすることも予想されている。

さらに、トルコには「難民の流入」という喫緊の問題がある。米国は2日、米軍に協力したアフガニスタン人に対し、トルコなど第三国に向かい、米国の難民プログラムに申請するよう助言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。この助言によって、トルコへの不法移民(注)が急増しており、当初、アフガニスタンからの「難民」に対して好意的だった政権も態度を硬化させ、現在は「無秩序な移民」は本国に送還するとしている。エルドアン大統領は15日、イラン国境沿いのバン県に壁を建設し、不法移民の流入を阻止するとも発表している(8月15日付国営アナドル通信外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

トルコでは360万人と言われるシリアからの難民が既に社会問題化しており、生活習慣などが異なるアフガニスタン人の流入は、頭の痛い問題だ。イスタンブール移民局によると、2021年に入って拘束された不法入国者数は8月までで3万7,072人、そのうち1万2,893人がアフガニスタン人だった。

最近はシリア人やアフガニスタン人による強盗、暴力事件の報道が相次ぎ、治安悪化に対する市民の不安が大きな問題となっている。11日には首都アンカラで、暴徒化したトルコ人の集団がシリア人を襲撃するという事件も発生している。

元外交官など有識者の間では、難民問題も含め、トルコが単独でアフガニスタン問題に対応するのは得策ではなく、国連を中心とした国際社会と歩調を合わせるべきだとの論評が多く見受けられる。特に難民問題に関しては、トルコを通過地点としてではなく目的地として移動してくる可能性が高いとして、国連などによる国際的な対応を求めている(「デュンヤ」紙8月17日)。

(注)トルコの「難民」の定義外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、欧州から難を逃れた人々に適用されるため、東方からの難民は正式な「難民」ではなく、「不法移民」と定義される。

(中島敏博)

(トルコ、アフガニスタン、米国、中東)

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