炭化水素資源開発へ、工業化促進の恩典を定めた法案提出

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年09月27日

アルゼンチン政府は9月15日、炭化水素資源開発への投資促進のための恩典に関する法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを上院に提出した。政府は世界的に進む脱化石燃料の動きを支持し、将来的な再生可能エネルギーへの移行を目指しつつ、エネルギー源の中心に天然ガスを据えることで、自国の経済成長に必要なエネルギー確保を目指す。また、炭化水素を自給自足することで、輸入を減らして外貨支出を抑制するとともに、輸出を増やし外貨獲得を目指す。

法案では、炭化水素資源開発と工業化への投資促進のための恩典の有効期限は、法律の発効から20年。8つの制度が設けられており、とりわけ重要なのは、石油探査・生産活動促進のための一般的制度(RGPP)、天然ガスの探鉱・生産活動を促進するための一般的制度(RGPGN)、炭化水素とその派生品の探査、生産、工業化、貯蔵、輸送のプロジェクト促進にための特別制度(REPPH)の3つだ。

まず、3つのいずれの制度でも、当局の認可を受けた事業は国、州、市町村のいずれの租税についても税率の引き上げや新税導入の影響を受けない。税制の安定が保証される。

石油資源開発を対象としたRGPPでは、生産量の2割を輸出、8割を国内に向ける必要があるが、生産量があらかじめ設定するベースラインを超えた場合は、当局の承認に基づいて輸出をさらに増やすことができる。承認分の輸出については、輸出税率を引き下げるとともに、承認分の輸出により得られる外貨の半分を自由に使うことが認められる。

天然ガス資源開発を対象としたRGPGNでは、国内の天然ガス需要が減少する夏季の輸出分については、輸出税率を引き下げるほか、輸出により得られる外貨の半分を自由に使うことが認められる。

炭化水素資源開発への新規投資を促すREPPHは、探査や生産など事業の内容に応じて600万ドルから3億ドルまでの投資を条件に、投資額の25%を上限に、輸出により得た外貨の2割を自由に使うことを認める。また、輸出税率の引き下げるなどの優遇措置を受けることができる。天然ガスの輸送、貯蔵、工業化向けの12億ドルを超える大型投資については別途、特別な恩典を設けている。

米エネルギー情報局(EIA)によると、アルゼンチンのシェールガス、シェールオイルの埋蔵量はそれぞれ世界第4位と第2位。一次エネルギー供給量(加工されない状態で供給されるエネルギー)の構成比に占める化石燃料への依存度は高いが、鉱物性燃料は輸入超の状態が続いている(添付資料図1、2参照)。政府は新たな恩典の導入により炭化水素の開発を後押しする。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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